#The Sunshine Underground
七日間降り続いた雨が突然止んで、僕は、靴下を脱ぎ捨てて小屋から、原野へ向かって飛び出す。僕は、僕の体を必死になって追い掛け回し、原野を駆け回る。雲の隙間から陽が指してきて、ところどころに陽だまりを作っている。その中で、金魚が数匹泳いでいる。豪雨が残していった水溜りに手を差し入れる。そして、何かを掴んで引っ張りあげる。一人の黒人の男性が、下半身だけを衣で隠した姿で、現れて、僕は、やぁ、こんにちわ、と、挨拶をする。彼は、静かに、頭を下げて、挨拶を投げ返してくる。それから、彼とは友人になって、火の起こし方や、食べられる雑草をとったりしながら、暮らしたが、ある日、僕が眠りに入ると、僕はそのまま、水の中を泳ぐ夢を見る。すると、頭上から誰かの手が差し入れられて、僕の肩を掴んで引っ張り上げる。彼は、白人の若い男性で、僕に向かって、HELLO!と、挨拶してくる。僕は、静かに頭を下げて、挨拶を返す。そして、彼に、火のおこし方や、食べられる雑草について教えてやった。
Ohayou!おはよう!
#Around The World
友人とともに、1934年作の『オズの魔法使い』を見る。夢の世界と、現実の世界との区切りは、白黒の絵とカラー絵に隔てられており、なぜか、現実の世界の描写は、白黒のままで、色がついているのは、夢の世界。ドロシーは恐らく、精神的に不安定なのだろう。彼女の感情の起伏の激しさがそれを物語っている。なるほど、つまり、こういいたいわけか。私が今、見つめている世界は、まさに夢なのだと。現実の世界は、白黒で表されるように、無味乾燥な世界で、美しさ、醜さ、味、そんなものはどこにもないのだと、見終わった後、隣に座る友人に、「はじめまして。」と挨拶をした。
虹彩という夢を!
#Over The Rainbow
麦畑を妻とされている人と手をつないで歩いている。黄金という言葉がふさわしい風景の中を、麦を掻き分けながら進んでいくと、私の小さな家があり、犬が一匹こちらに向かってほえている。土壁の家のところどころにはステンドガラスがあって、紫や緑、赤、黄色、と、色彩を放っている。さらに、進もうとすると、妻とされている人が腕を強く引っ張る。振り返ると震えている。どうしたのか、と、問うと、あそこには、魔女が住んでいる。という、いや、あれは僕らの家じゃないか、と、答えると、二階の窓は開いて、一人の老婆が、箒にまたがって、私たちの上を通り過ぎていった。延々と続く麦畑、黄金のじゅうたんの上を、魔女が飛んでいく姿に見とれていると、妻とされている人は、ほら、いった通りでしょう、と、では、僕らの家は?、と、聞きくと、指をさして、ずっと向こうだと言う。
落下する地平線上を超えて、そのまた向こうまで、そこではもう私は中心ではなく、誰かの中心へ接近する、そう、私が中心でいられなくなる場所まで、永遠に!
#World's End Garden
ここは、光が鳴っているな、ツー.....トット.....ツー.....トット、と、映写機に映し出された私の背中、円錐形の内で青白く照らし出されて、影がスクリーンに大きく写る、影は私の意志や体の動きに対応せず、一人でに歩き始めて、舞台袖へと消えていく。私だけが、未だに、映写機に照らし出されて、青白く、何も映し出さずに、影も作らず、ぼんやりと取り残されたまま、ずっとその場から動くことができない。そして、何かが大きく軋む音だけが、会場に広がって、私は地面に倒れこみ、強く額を打って、嘔吐した。
最後に、嘔吐物の中から無数の蝶が飛び出し、劇場全体を青く染める、
#Reset,Sunset,Emerald
bird、達が空へ、そして雨が、rain、まずは、喉を切り裂こう、無数のガラス破片が飛び散って、すべてを光に変える、次に、額が裂け、陽が昇った、最後に、真っ二つに裂けた体から、Emeraldが、飛び出して、そして私を包むまでの話を、かなえられる願いことはいつも一つだけで、思い出せばはるか彼方、私達がいまだに姉妹であったころ、アポロンとアテナイの女神の憂鬱のうちに生まれた一つの涙、緑、赤、黄色、そして、あの青の延長線上で鳴り響く、アリアが、地平線上に落下するまで、数え続けられる数々の数式、それら一つ一つに刻み込まれた、秋月の落ち葉、そして、すべては、明暗の点滅のうちに、すべての夜を焼き払う光の中で、爆撃音が、ポーン、ポーンと鳴って、bird、達は、空を忘れた、blue、blue、青よ、青よ、どこへ、どこへ、早朝、世界が吐く吐息の内に隠されてしまった青が、水泡に包まれて、成層圏で破裂するまで、地球儀を駆け回って、花に水をやる誰かの上に、雨が、そして、rainが、このあまりにも晴れ渡りすぎた空の下から、今すぐにでも連れ出して、雨の中へ、Emeraldに包まれて、最後に光が、光に焼き尽くされる頃に、もう一度、世界を、Emerald!
- ikaika :
http://d.hatena.ne.jp/ikaikaika/20060802 ('06/08/02 01:19:47)
- ヒダリテ :
はじめまして、ikaikaさん っていうか、もう読んでないとは思いますが。
僕はね、この詩ね、好きですよ、実際。
前作、前々作は、ちっとも面白くなくて、また上手くもない、って感じだったけれど。
この詩は、すごく描かれているイメージもきれいで、っていうか、うん美しいとすら言えると思うし。。
うん、実際僕はこの詩を賞賛したい気分でもあって。ね。(詩をね。君を、じゃない。)
特に、個人的には、前半の三つ、#The Sunshine Underground #Around The World #Over The Rainbow これらが、好き。残りの二つは、なんというか、悪い意味で、ikaikaさんらしさ、みたいなのが、にょきにょき出てきている感じで。ちょっと、どうかなって感じもありますが、でも、それでも、やっぱ、いいと思う。。
君はもう去ってしまったのか、去りつつあるのか、あるいはまだ迷っているのか僕には分からないけれど、もし君が去ったとして、あのね、やっぱり、そのことを、ちょっとくらい残念に思っている人も何人かいるとは思うし、僕はそのちょっとくらい残念に思っている人の中の一人であったりもするわけで。。
多少さ、なんつうかさ、もっと謙虚に振る舞っていれば(ポーズだけでもいいんだ)、なんだろ、たぶん、もっと君の書く詩にだって、共感しました、なんてレスがたくさん付くと思うし、実際君は才能のある人みたいだし。。
ま、しょうもない話だけど、いろんな人がいて、いろんな考え方があるわけで、、ね。その人たちみんなが自分の主張だけ、わーわー喚いてたら、これ、収集付かなくなっちゃうわけでさ。だから、ま、納得できない事も、そりゃいろいろあるよ。でも、口に出さずに、心ん中にとどめておくべき事もいっぱいあってだよ。。人の意見に耳を傾けつつ(これもポーズだけでもいいんだ)、その上で、謙虚に(そのフリでいい)ね、「でも俺は思うんだけどさ」って、そんな風に君の主張をすれば、君の言葉に耳を傾けてくれる人もいると思うんだ、僕は。君は実際頭いい人みたいだし。
んー、で、なんつうか、このレス、意味あるのかないのか、分かんないけど、この『詩』はもっと救われるべきだ、と感じたので、コメントしました。誰も出て行けなんて言ってないのだから、またヒマになったら帰ってきたらいいんじゃないでしょうか。
はい、それでは。 ('06/08/05 05:03:44)
- コントラ :
僕は、ikaikaさんの渋みがある文体が好きで、基本的には感性で読んでます。
この作品は前作よりも映像的で、コントラストが鮮やかに決まっていると思う。ただ最終連はちょっと大仰な身振りで興ざめします。
>最後に、嘔吐物の中から無数の蝶が飛び出し、劇場全体を青く染める、
ここで止めてもよいのではないだろうか? ('06/08/08 00:34:09)
- ダーザイン :
久しぶりに凄い詩を読んだ。力強い。荒削りな印象は、通読すれば不思議と消えてしまう。原生の荒野に生まれたはずの者が架空の世界に至り(個体発生は系統発生を繰り返すからな。土人からバーチャル)、女が架空の世界を破壊し、嘔吐の中で生の強度を確認し、しかし現代人の生にはもはや中心はなく、生に内在化されたものとしての中心はなく、無いことを確認する作業が、たぶん、今のikaika氏の詩行なのだろうが、最終連#Reset,Sunset,Emeraldは圧巻だった。カウボーイビバップ入っています? とかいったら褒めすぎかな。青の中の青、溶鉱炉の中のエメラルド。光は、見上げると、落ちていきそうな青の果てだ。天空がみしみし音を立てて青空が割れそうだ。
どこのサイトを見ても、どの雑誌を読んでも、何か言う気になる作品、どころか、何か感じる作品に出会えることがなかなか無い。ましてや圧倒されるような文学体験など。
こういう詩が書けるのなら、また来てくれ。
彼女が欲しいとかどこかで言っていたが、そんなもの簡単だ、口説けばいいだけ。女がいない奴は、口説かないからいないだけだ。あたってダメなら手当たり次第、そこらじゅうの女に声を掛け、褒め、口説きまくる。一日一膳くらいの気持ちで口説き続けていれば、女に不自由することなんてなくなる。ミドリさんみたいなラブポエムも書けるようになるぜ(´ー`)y-~~ニヤニヤ ('06/08/08 01:12:21)
- Toat :
初めまして。
きれい、ではあると思うのですが、「きれい」という言葉で片付けるのを躊躇ってしまいます。これはもっと複雑な「きれい」だと思うので。
ikaikaさんは自らが想像する「きれい」な情景に対して懐疑的なのではないかな、という印象を抱きました。そのアンビヴァレントさがこの詩の雰囲気を研いでいるような気がします。
「僕は、僕の体を必死になって追い掛け回し」「私が今、見つめている世界は、まさに夢なのだと」「妻とされている人」「私が中心でいられなくなる場所まで」「私は地面に倒れこみ、強く額を打って、嘔吐した」「かなえられる願いことはいつも一つだけで」などの表現からもikaikaさんの思考・想像の自虐性・懐疑性・アンビヴァレンスが窺えるように思います。
個人的には、こういう屈折は結構好きです(笑)
個々の表現について、僕は大したことは言えないのですが、幾つか挙げてみます。
#The Sunshine Undergroundの「金魚」はもう少し鮮やかなインパクトが欲しいなと思いました。「白人」も同様です。「黒人」との対比をもちろん意識されていたのでしょうが、(僕の中では)白人は白という色彩のイメージがすんなり湧きづらいような気がします。なので対比が生きていない印象でした。また、「食べられる雑草をとったりしながら、暮らしたが」の読点でこの詩に引き込まれました。(なぜだかはよくわかりませんが・・・多分リズムの問題でしょうか・・・)
#World's End Gardenの「何かが大きく軋む音だけが、会場に広がって、私は地面に倒れこみ、強く額を打って、嘔吐した。最後に、嘔吐物の中から無数の蝶が飛び出し、劇場全体を青く染める、」この部分は聴覚的にも視覚的にも鮮烈でした。
#Reset,Sunset,Emeraldは全体的な感想になりますが、イメージの破裂・飛躍がそこここにあり、浮遊感が心地よかったです。
訳のわからない感想になってなければよいですが....
それでは失礼致します。 ('06/08/08 16:30:20)
- 平川綾真智 :
拝読させていただきました。
やっとまとまったので、書かせていただきます。
何度読んでもこの作品面白いです。
凄いのは、何度読んでも違った部分が際だってきて読む度に印象が変わって、同じ読後に陥らないこと。
句点が荒いんですけれども、構成は見事だと思いましたし、個人的に勉強になる作品でした。
Hatenanikkiが憎い位に効いています。
そして、何故面白いのかがどんどん解らなくなっていくので、本当にためになりました。
何度寝ても次の日残っている強烈な作品でした。
以上です。
失礼します。 ('06/08/09 16:18:46)
- 水無瀬咲耶 :
はじめまして。
何度も読み返しました。
はじめの 「七日間降り続いた雨が・・・」「原野を駆け回る。」
最後の 「雨の中へ、・・・もう一度、世界を、Emerarud! 」
どこかしら啓示的で、ノアの方舟伝説が自然と思い出されました。雨から次の雨までを一期間とし、「僕」が現代における人間の精神(?)を探索し、世界を再構築(もしくは世界の真髄を捉えようと)している印象を受けました。
もし読み誤りでなければ、これは現代版創世記では。(爆っ! )。
大きな枠として、雨によって意識の上での死(リセット?)と再生がもたらされ、この詩で再生の部分が語られていると思われました。最終連では、「僕」が世界そのものになったような・・・。
圧倒的な個々の表現も面白く、一気に最後まで引きずり込まれました。
この詩に凄く揺さぶられ、思わず書き込んでしまいました。
批評というより、感想になってしまい恐縮しています。失礼します。 ('06/08/10 12:37:59)
- 松本K :
一連目、小屋から原野へ、失った肉体感覚を取り戻すため原野を駆け回る男、冒頭から哲学的内容を含んでいるように思えて、読者の脳髄感覚を研ぎ澄まさせます。引っぱり上げた黒人から生存手段を教えてもらい、引っぱり上げられた白人には逆にそれを教えてやるというところは作者のそうありたいという願望か、あるいは現状の文明の危機を暗示しているのか、そのあとこれらがどう展開していくのかなという気にさせられました。
>落下する地平線上を超えて、そのまた向こうまで、そこではもう私は中心ではなく、誰かの中心へ接近する、そう、私が中心でいられなくなる場所まで、永遠に!
最終2連はそこに至るまでの作者の苦悩・行為とそこで見えているはずであろう光景の予感のような気がしましたが、ラスト、描写は破綻しながらもぎりぎり到達したいという強い願望が何か祈りのようにも思えました。
夢の世界と現実の世界の区切り、これを現実に合一化できるなら我々は全く別の世界に飛んでいけるのだろうと思います。そのために芸術行為があるとも言える。なかなかすばらしい詩を読まさせていただきました。 ('06/09/03 15:11:04)