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goat - 2017年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


内向き世界(We’re gonna take the country back.

  goat



コーヒーには
不穏が淀んでいます。
そういってヨシコさんは旅にでた
ヨシコさんは祖母の介護をしてくれてたから
ちょっと困った
祖母はヨシコさんのことなんか
あっという間に忘れてしまって
今日もサフランの絵を描いている

深く焙煎するのがすきだ
そんなに知識があるわけじゃないけれど
香り高く燃え尽きようとしているのを
みているのが楽しい
とても苦く深く
そして熱い
コーヒーには人生が淀んでいる
とは言わなかったな、ヨシコさん

彼岸花が咲く季節になりました
この花の根っこは百合に似ていて
美味しいのだそうですよ
お団子にしたら
コーヒーにあうのかしら
それから
ちょっと変わった豆を手に入れたの
おばあちゃん


記憶iv

  goat


たとえば差し込んだ朝の光にまばたきするように鳥が訪れを告げたとして
たとえば寒闇にくしゃみをするように紛れた蝶が不在通知を運んだとして
その比喩に私たちは星が流れるような或いは願いという傷を託したとして
救いという器は言葉では満たせない
伸びる蔦のような
芽吹いた先になにをつかむのか
けれど冷えることをいとわない
あたらしいゆび


海をみるのが好きだった
今はと聞くと目をそらした
影だらけの町には
海の記憶の欠片もなくて
それは空だという人もいるけれど
私にはわからない


大きなお風呂場のようだ
とても塩辛く残酷に打ち寄せる
それは浮かぶ大きな嫉妬のようだ と
海を知る 鳥たちが落とした杖には記されてあって
子供の頃に担いでいたランドセルの
端から突き出したリコーダーが
勝手に風になるような
そんな不可能を想像したりもする
膝小僧を泥で汚したまま


自由だなんて簡単にいうのね
たしかな重みを引き抜きぬいて
そうして星がひとつ転がり込んだ夜
もどかしさが初めての煙草に似ていた
ひどぅんめもりー
虫食いだらけの肌色が
自由というケムリにほだされる頃
右回りに吸い込まれていく
ささやかれたくちびるが残像になる


あまりの残らない
割り算を教えてください
だいじょうぶ
言葉の縁が欠けているのに気づかずに
薄くながれていく血液の梢
落ちた小鳥がはらわたから腐っていくような
同類項に綴じられる憂鬱
またうらぎられるの
とても陳腐だ
とても綺麗だ
その匂いが海に似ているなんて
だれも教えてくれなかったね


瞳のなかに沈殿した
光がながれだすと声がきこえる
抱きしめると胸が汚れる
巻き取るように開かれた
未だ脂にまみれた指は
何かを告げる文字を描き出し
それはきっと誰も読めない言葉だけれど
もしかするとやがてこのよをにぎりしめるものかも
しれない

文学極道

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