朝霧の満つる浜辺、
脊椎たちの群が入水してゆき音、音、水の音またひとつ、
鳴る度に閃光、霧を夢想家の子の服の色に染めてすぐ消える。
紅葉の音、イヌガシの音、
すみれ、白詰草、ラベンダー、一輪の薔薇、
みんなみんな身投げする音の群、やがて谷底から光になってあちらこちらへ。
ぼくは椅子に座って空を見ていた。
それを君が、白痴のようだと笑った。
ぼくは何だかとても恐ろしくなって、君にしがみついた。
ぼくは君に頭をなでられて、それきり動かなくなった。
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朝霧の満つる浜辺
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すみれの歌
angelus-novus
あなたに向けてはなします……
あなたはだれかしれるものではありません
それでもあなたに向けてはなすほかにしようがありません
それは
呪い
で
した
すみれが傷んでいきます……
だれも知れる事はできません
ふか
のう
せい
はとてもとても、とても強く、存在がな
くてはどうしようもないと
誰も知れません
知れないのです
誰も
誰も……
すぎさりませば誰も彼もがふり、
かえって誰も糸にむすばれていました
きってもきってもきれないのですが
ときはすぎさってしまうので
みんなが
唖になりま
す
(あの人は旅先で死にました。
浮かれていたら自動車に轢かれたのだそうです。
最初の手紙を待っていたらそれが死の知らせでし
たので
こんら
んしま
したた
るちが
おもいうかんで
ないぞうがとび
ちっていったの
でしたらばあの
人の恋人は、ただ戦後の詩ばかりを読み始めました。
せまかったしことばがとじないので
かのじょはむりやりことばをとじて
しまいまし
た
。)
すぎさりませばだれ彼といわずに
いたんだすみれのうえをおどって
至るまでのときを白い疵のついた
いつまでも枯れないすみれの上で。