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angelus-novus

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


朝霧の満つる浜辺

  angelus-novus

朝霧の満つる浜辺、
脊椎たちの群が入水してゆき音、音、水の音またひとつ、
鳴る度に閃光、霧を夢想家の子の服の色に染めてすぐ消える。

紅葉の音、イヌガシの音、
すみれ、白詰草、ラベンダー、一輪の薔薇、
みんなみんな身投げする音の群、やがて谷底から光になってあちらこちらへ。

ぼくは椅子に座って空を見ていた。
それを君が、白痴のようだと笑った。
ぼくは何だかとても恐ろしくなって、君にしがみついた。
ぼくは君に頭をなでられて、それきり動かなくなった。


すみれの歌

  angelus-novus

あなたに向けてはなします……
あなたはだれかしれるものではありません
それでもあなたに向けてはなすほかにしようがありません
それは
呪い

した

すみれが傷んでいきます……
だれも知れる事はできません
ふか
のう
せい
はとてもとても、とても強く、存在がな
くてはどうしようもないと
誰も知れません
知れないのです
誰も
誰も……

すぎさりませば誰も彼もがふり、
かえって誰も糸にむすばれていました
きってもきってもきれないのですが
ときはすぎさってしまうので
みんなが
唖になりま


(あの人は旅先で死にました。
 浮かれていたら自動車に轢かれたのだそうです。
 最初の手紙を待っていたらそれが死の知らせでし
 たので
 こんら
 んしま
 したた
 るちが
 おもいうかんで
 ないぞうがとび
 ちっていったの
 でしたらばあの
 人の恋人は、ただ戦後の詩ばかりを読み始めました。
 せまかったしことばがとじないので
 かのじょはむりやりことばをとじて
 しまいまし
 た
 。)

すぎさりませばだれ彼といわずに
いたんだすみれのうえをおどって
至るまでのときを白い疵のついた
いつまでも枯れないすみれの上で。

文学極道

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