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津島ことこ - 2010年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


塩小路

  津島ことこ

*化石

ならない電話をのみこんで
渦まくコードの
耳から漏れる
おとのかたまりを見つめてた。


*氷菓

たて波の断面のように
歯こぼれしていた、
底冷えのあさ
薄切りのきゅうりを
しおもみする
あなたの手なれたてつきは
迷いひとつなく

(ちそうをてさぐる
(はりめぐらされた地下鉄
(ぼうぜんとしながら、とおりすぎてゆく
(息つぎの しろい
(雑踏

おどろくほどかるい
すかすかの骨を並べて
路線図を模すと
せいぜんとした、標本のように
収められてゆきます


*流木

しもやけが
路肩のあたり
いちめんを覆う
わきたつ感触

まざまざとあらわれる
干渉縞の
波うち際で
(かつて根があり、気孔があった)
幹は
流線をとどめたまま

交錯する袋小路で
削ぎ、おとされた
受話器を置く


とりのは

  津島 ことこ

はこがまえ 挙動ふしんの空白は ふれない頬とほほの衝突


金よう日、ラジウムみたいに放射して裸子植物を食む子にもどる


黒鍵を人差し指と薬指で押さえたらいちめん緑


点描の夢をみました。それだけです。ただ輪郭をみつめただけです。


高架下まで三脚を引きずって くさかんむりを手向ける考察


アスパラの茎がみるみる伸びたので子葉はすべて退化しました。


ウエハース製の座卓をかじってるわたしの中のマトリョーシカたち


草原をすべるボートは音もなく 楕円のかたちにふくらむ白夜


満たされぬものがなにかも知らないで満たすエーテルひかりになりたい


一辺と一辺になる西の空 折り合いをつけた鳥が飛びたち


錯覚の 明日を向いて腰かけた象の背中は亜寒帯色

文学極道

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