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村田 麻衣子 (村田麻衣子) - 2012年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


"コウノトリララバイ”

  村田麻衣子



声がかすれてかすれてやばいて、それでもいじれてないで 
ちゃんとしゃべらないと。指をすり抜けたシールド踏んだ
まま雑踏を歩き出した かき均すともわからない管それは
感情であった、アスファルトに書き殴るみたいに、歩き出
す やたらおっきな声 出してしまって、洩れてしまった
声が、だっさいなーなんて。

放った鳩時計を元通りにして とれたネジ巻くふりしてた
。羽が、日を透かして血潮を温かく散らかした 破れたコ
ラーゲン、骨まで溶けちゃって 祈りから解放されるため
に正気を取り戻す。いのちなんて初めからなかったかのよ
うに翳を追う白と黒の時計仕掛け いくら反回転しても、
見えているあの坂にあなたは転がる 傾斜を、その女性の
美しい曲線をあなたは かき均すななめの前髪から見えて
いるせかいは、バランスよく崩れているから 鳴っている
単音オルゴール歌って、ねえ和音にして二人でのこと、し
ゃがれ声はわたしにだけ聴こえてるだから暗黙。ipod再生
して、早送りし過ぎてひとり取り残された交差点のオルゴ
ールでやや早歩きに 見慣れぬあなたの早起きで。向こう
岸に見つけてから首をもたげて。あたまをぎゅってヘッド
ホンにされて、いとおしさが容量を越え フォルダに分け
そこにはわたしという要素が充填してはっとする シャン
ソンそれはわたしの声量にちっとも相当しない そうやっ
てスタンダート追い越していく 漏洩したヘッドホンから
聴こえるUSインディー 聴き入るあなたがいてここまで孤
独が騒々しいと思わなかった それがわたしにとってのB
GMだから、コウノトリララバイ。第一啼泣に、呼吸が間
に合わなかったこどもたちのあえぎ 音階を、アスファル
トすれすれでこぼしてしまった鳥たちの死骸をひとつだけ
見つけて 何の鳥かわからなくて 進行方向の向こうにい
るんだって、みんな。ここからみんなが泣き始めるってと
こでコード3つ忘れて適当にジャンジャカジャン 鳴らし
ても ヘッドホンでは近すぎてスピーカーは遠く感じてし
まって みんなまるで知らん顔。あのこが転んだ気がして
、立ち上がるまで待っていた そうしたら目が覚めたんだ
って、朝。

泣いている人を籠に入れ、わたしがここからいなくなって
しまいそうだった コンビニガツマンナインジャナイ嗚咽
コラエテこころのなかでわんわん泣いているわたしに気付
いた人が、無糖のコーヒー買うとこ見てた。イナクテモヘ
イキニナレヘイキニナレヘイキニナレ3回唱えても かな
しみを抱えきれなかった思いを、からだから均等に離した
だけ
 「静寂…? いや、コウノトリララバイ。」
蹴ったら、ぎりぎり部屋だった ベランダでやっと泣き止
んだあなたは、やっと赤ちゃんになれたみたいで 甘えて
きたから抱きしめて 体が冷たいのがわたしの方だって気
づいた ずぶぬれの質感ある液体で 分離した重圧と軽率
を いとおしさで正気に戻してでも、海は険しくて、脚を
ひっぱられるかんかくが周期的にやってきてまた そのメ
ロディにみんなが絶望して泣いたって人づてに聞いた 漣
は 編みかけの籠の解れを電熱線で伝うようなノイズ そ
の揺れを繊細に、眠りに誘う あなたがどんな姿になって
もわたしには 子守唄が聴こえてるって、耳に手をあてて
いた


puppet

  村田麻衣子


クローゼット片付けてたら、要らないものがでてきちゃうし、
ぬいぐるみとか昔の手紙とか下手したら子供のころもらったよ
うなのも、平気で捨てちゃってる「わたし」を主人公にして。
中途半端な日当たりが嫌でたまらなくて、カーテンを閉める。
そこから物語が始まってしまうから わたしは あとは、エキ
ストラがたくさんいるからいいや。みんなやたら色んなものを
残したがる。やたら子供を欲しがったり、感情的に身体的に流
されて、オンナノクセニって言われ慣れてない証拠に、社会に
でれてない証拠に 感情が操作不能なくせに
産んで育てない奴はクズだと思う。
経済的に現実的に、もっと正確に感情は違った方向に流れてく
はずなので、それをいとおしさの正体をつきとめられもせずわ
たしは刻々と護る「わたし」を、素敵な部屋に囲い。誰かを
護るということそうして、やたら保存したがるのを嫌うそのす
べをあとからみつけようとする癖に、その記憶力と想像力が欠
如しているがゆえに、その現実に甘んじて産みたがる女たちの
例がそれなのかもれない

捨てられないから、こんなにぐちゃぐちゃになってしまうし。
あたまのなかもぐちゃぐちゃで 今してることの何が、これか
らに通じているのかわかんないし。永遠に結びつかないすべて
が、刹那的なものに目を奪われているだけのような気がして胸
がぎゅってなって、涙が出るまえに「違うよ。」って思えたか
らよかった。冷たいフローリングにカーペットを敷きつめる。
昨日の飲み会は、お見合いパーティーみたいでつまんなかった
。誰よりもはしゃいでお酌してたのはわたしだけど(笑)ふと彼
からもらったメールを思い出してしまって がやがやとうるさ
い会場を写メに撮って[保存しません]を、クリックして返信し
、途方に暮れてしまった。カーニバルで、はぐれて迷子になっ
たみたいに 急に誰に話しかけたらいいのかわからなくなって
しまって帰った グレイのワンピを着て、クローゼットから見
つけた花柄のストールを羽織ってた。そこにいる人達とわたし
が、欲したもののあいだにファッションが存在し セックスも
同じでように わたしたちどうすればいいのかよくわかってい
る。何事にも鮮度が大事だけど、グレープフルーツは熟してい
るほうが好きで、食べようと思うだけで痺れてしまうくらい好
き。

彼はこの部屋の真昼の訪問者であり、夜に染み入る電飾焦がれで
今ごろ、モザイクをはいだ半裸の女たちとまぐわっている。
わたしは冷蔵庫の中にあるだろう食材を食べようとしたら、
実際にあのはんぶんのグレープフルーツはなかった事実に消衰した
あのこは、そんな世界があるとも知らずに子供を育ててる

彼やそのすべてにおいて心を奪われた瞬間から、あけっぱなした冷蔵庫の前に座りこんだわたしがバドワイザーをあけるまでのえいえん。内側から外側にかけて故障してるみたいにひりひりとひかる。次はわたしに何を演じさせようか、えいえんにつづいていきはしない今が、そういうインパクトのない時間が流れていく。 

文学極道

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