一握りの種が
冬をいくつも超え
草むらは黄色の波に
花の精は
甘い香に誘われ
ひとつずつ見ては舞う
土に太く根を張り
スクラムを組み
風にも倒れず
何の手入れも要らず
来年の種までつけ
あるがまま無心に咲く
欲を重ねる人間には
到底かなわない
桜の人気をよそに
わたしはわたし
弱いようで 強い
誰にも負けない
この色
理にかない
表も裏もなく
寒さに耐えた分だけ
花びらはほほ笑み
嘘のない世界が広がる
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かわせみ
菜の花
かわせみ
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冬の花火
かわせみ
一瞬の瞬きは
黒い海に散っていく
スターマインの残像を
夜の静寂がつつむ
青空に群がっていたカモメも
真っ直ぐに伸びた飛行機雲も
さっきまでの花火も
全て姿を消して
煙が居直っている
闇に溶ける
ここでは
何にも脅かされない
誰にも縛られない
寒さを忘れて
思うがまま漂う
巧みなことばで
人を押しのけ
のし上がろうとする
許せない奴
ありったけの思いを
空(から)になるまで
闇に打ち上げる
宿に帰る人の声に
無の旅から
色も形も
嘘もある道に立つ
灯りが眩しい
月の道
かわせみ
夜の海岸線
月を追いかけ
やっと見つけた
真っ直ぐに月へ続く道
さざ波に誘われて
ふんわりふんわり渡っていく
地平線の上に
浮いている月と
ゆったり交信する
「旅はいかがでしたか」
「試されて
生かされて
面倒でした
何を遺せたのか…わかりません」
「お忘れものはございませんか」
「すべて捨ててきました
もう戻りたくはありません
これからの旅を楽しみたいです」
わたしの魂は
夜明けに向かって
銀色の道を
潮風に吹かれながら
ふんわりふんわり渡っていく