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kaz. (はかいし) - 2009年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

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十一月、波打際

  はかいし

由比ヶ浜は沈んでいくときいつも産声をあげて泣いていた。はじまり、の詩句が似合う、弾けた鞠なんだ、追いかけるように後ずさる。泡。僕らはどこまでも形骸と化した空気を追いかけて、空に跳躍、する。

イカロスは翼があったから空を飛べたけど、鞠には翼はないから、僕たちの心臓の向こうに落ちて、ざぶんと飛沫を上げるんだろうね。穏やかな破水。空を仰ぐ間に押し寄せてきた。波。波。と注がれたかなしみに落ちる。

本当は留まっていたかったんだろう。鳴動。は薄れて、日暮れまで届かないうちに、距離は失われ、気がつけば心臓を通り過ぎていた。重なることはない。影たちに、あなたは、濡らされて。はじ、は恥、まり、は魔力だったんだ、空が遠くから、海も遠くから、見ていたんだろうな、

ざぶり、ざぶり、

跳躍は、深く沈むことを、どこかで望んでいたんだ、はじまりが、どこまでも続いて、はじまりで終わる、波打際が、残酷なやさしさで削っていった。わたし。は泡になって、はじけたまりで、はじのまりょくを、もう一度、見せつけられて、冬の海は、煩いほど胎動する、


かもめ

  はかいし

ながすぎたうたが
ながされていった
しぶきゅうふは
かもめになってそらをとぶ
わたしたちのすごしたはまべに

おとこたちのゆうべは
おんなたちのあしたで
くずされたすなが
ふたたびたましいをつくり
たてられたかさがうめつくす

ひとりきりですごした
しおみずのかおりが
おとこたちをかたむけて
おんなたちにそそがれていく
かさはとじられて
やってきたゆうべ

からになったうつわが
すなのなかにくずされて
すなはうみのなかにくずされて
うみはうたのなかにくずされる
うたはおんなたちのむねでねむる

やがてかもめのなきごえがきこえ
おんなたちはおりかさなって
うみにはいりこむかわのながれになり
としおいたおとこたちが
かさをふたたびひろげ
あさひがおぼろげなせなかに
かもめはほほえんでいる

文学極道

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