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作品 - 20200909_841_12103p

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水鳥の眠る場所

  鷹枕可

深く病める者たちが 死の瞳を覗く、或は曇壜に、水葬の汽笛に、硬直する、造花の錫、瓶に
長らくを、壊れ果てていた、部屋部屋に、十字の影が差し、慄く者たちを、浮き彫りと為った洞窟へ、つれさって行く、
旧い骨壺、砕けた遺櫃を、運命の帰途を、振り返り、
土は砂礫に潤む、
偶像へ、頑なに鉄槌を恃む、囚人達は、意識に溺れ、現に微睡を取る、
魘された鑑が、静かにも熔けてゆき、排水溝へ、銀の跡を、蹄鉄の様に撒き散らしてゆく、
蒼褪めた翳が、窓を吹き撓める、死者の諸手は、幾重もの、乾板へ固執しては、物憂う人体を、吊るし、
呵責に傷み、手折られた翼の花は、沈んでゆく、黒い血の、汚泥へと、
歓喜をして、死の囚人は、殴り付けられたかの様に、哂う、
白昼は昏く、憎悪の華を培い乍ら、その種子を並べある棚の、燃やされた帆船の、穹窿を象り、
思想を凌ぐ、巨躯の薔薇として、戦禍を厭う、丘陵のその端々に裔として、屹る、
石の麦を刈入れながら、
荷車に鬩ぐ、造花もまた葬礼の、服喪に附され、
寡婦は降灰の昼を仰ぎ、歩み来て、そして、去る

自らを、死の果てへ、突き落とし、哂う、
自堕落を催した精神
伝染病に冒され、
或は始源の罰に打たれたる
胎児、
四肢無き樹幹
心臓無き山鳩を告げよ
もはや夕は血をしか示さず
海溝を乾く
猶予無き死刑の一室、
裂罅を纏う
狂婦、肉切庖丁、
生涯に確かな者が下り、死の命運を告げる、
黄昏の柱時計を滴り落ちながら、
真実が悪意にしか宿らないものならば
悪意に拠ってしか存在を糾明し得ないものが人間ならば、
直ちに理想像はこの咽喉を刎ね落すがいい、

包帯に膿、
報復としての天刑病、
崩れた貌、崩れた肉体を
憎悪の糧として
優美に
脳幹へ泛べる、
禍根の巌、
苦役を、嗄れた涙液は啜り
石化した、火砕流の死脈を確乎と
築き昇らしめ、柱塔に、斃れた遺骸の多くを
黙祷に附して猶、
旱魃の厩舎に
殺害され、
磔の水葬花、対としての麺麭酵母、
絶無は若草芽の灯に燈り、
紫衣は穢れ、
死刑執行の血に清められた、
鎗穂へ、
差し伸ばされた
水蒸気の幽霊達、
テーバイに燃え落ちた苦艾の、
豫め約束を期された
地球絶滅収容所、
その衆目の檻舎に有りうべからざる死斑蝶は留まり、
_

樹は彫刻の膚を晒す、痛々しく、掠れた颪の許に、
窓には、包帯を滲む、跳弾の痕、
静かに、吹き込む、絹の容をした、雨垂れは、
沈潜をした、泉の畔に、漂離し、夜の底はその陰を差す、
枯れた傷み、落葉は、吹き溜る、橋梁に、そして土地に、

礎に濡れ、一縷の罅を伝う、哀悼を、弔砲が、報せてゆく、
浚われた火夫の、青褪めた肌には、腐敗ひとつなく、
齢若くして、水葬に附された、
航空空母に、
青年群の逞しい指を、歴史より、押流しては、已まない、
咳に血が混じりゆく、
刻一刻と、樹は彫刻の膚に、乾いた血痰を、泛べ、柱の様に 立って、いる

文学極道

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