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作品 - 20200428_359_11844p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


あるいは薬のように

  鈴木歯車

朝、
ぼくの生まれる遙か前から
ニコチンで黄ばんでいた歯と、
唇の境目が見えないほど
練り歯みがきにまみれた口の
あなたが笑っていた頃、

窓から日曜の薄い光が指していた
それは短い映画みたいで

映画が何度目かの終わりを迎え
歯みがきを帳消しにするように
あなたが玄関先で
マイルドセブンを吸っていた頃、

2人が戸外で
野焼き混じりの煙と
やっぱり食べ物みたいな
夕陽を浴びていた頃、

いつの間にか
ぼくは気管支アレルギーの治療しましょう、
とか言われて、
きみはきっと違う星からやって来た宇宙人なんだ
とも言われて、

たぶんそのせいで大抵
運動や、その他も
ブービー賞を獲っていたのに、
パパ、とか
ママ、とか
いう名前の人とは違って
そんなぼくのことを
隣で2本目に火を付けながら
気にしないでいてくれたのが
うれしくて うれしくて
ぼくはまだ治らないから
ニュースにならない彗星はあるんだよ
夜空に現れるつめたい
食べ物の幻影みたいなあなたを見ていると
いくらでも巻き戻せる気がしている

文学極道

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