空っぽの器に、引力がある
塀の外側に流れている川
流されるままの視線は遥か上空の
スピカを捉えている
絡繰りが睡眠を作り替える様を見つめながら
水溶液という怠惰を受け入れながら
ささくれた時計の針を、慈しむ
真っ白の紙に、引力がある
今日、鉛筆の芯が砕けた。
サラサラと零れて、どことなく消えた。
筆箱の中身を確認する前に授業が終わって
苛立ちの募った単語帳の端から
二時間前に見た、粗い放物線を思い出す。
カラカラと笑っている。
強情な問題が、いつの間にか、消えた。
たった一本の釘があれば
たった一筋の葉脈があれば
条件の無い地面を見つめながら
喉の奥で融解する
真珠にも似た、誘惑を
裏返った骨の上に、塗りたくってしまえるのです。
仄暗い自室を抱え
仄暗い自愛を抱え
点対称な、前を探す
拍動は、血液を見つめ、忘れられる。
論証の、崩落が、始まった。
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選出作品
作品 - 20200427_340_11841p
- [優] 淵 - 黒羽 黎斗 (2020-04)
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淵
黒羽 黎斗