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作品 - 20200427_333_11838p

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予定調和

  鷹枕可

――モナドは鏡である

[消えた華]

1−1

老いた貌があった
楕円の
化粧机に
曇り、鏡は私を憎むだろう
母を憎しめる且て 遠雷の日々の様に
蒼白く褪めた
窓が降り頻る
夜からひきはなたれた昼の底へ
垂線を画きながら
決して交わらぬ父母の様に
写真館、の微笑が
凍て附く微笑が
黒く塗られ
絶対の抽象になるまで
私は手紙を書きつづけなければならない、だから

室内楽ばかりを耽り聞きいしが割れたる皺の絹をしらざりき

千枚の便箋、切手、肉筆を焚く 軽やかにも蝶蝶は蝶蝶の如く跳び

血縁よりいとけなき頃吾を捨てし罐切の飽く迄もタングステン加工刃

世界のごと麗しきを航空戦略爆撃機と呼ぶ いま汝が片靴はいづこ

容赦無き死はもろともに 誓約書散る書斎を樂譜《スコア》は

翰墨も血も乳も絶えなば肺腑以て書かむ 誰知るともきさまは吾が敵

//

モナドに窓は無い――、

[ユダヤ狩り]

2−×

私を愛して 一輪の切株  
夢に眠らせて 地下納骨堂
甘く囁いて 榴弾砲の錆朽斑
私を抱留めて 塩の骨壺

最期の喉を縊られながら、私は微笑みましょう
鉄砲百合の一撃を録音して
悪臭の地下壕から
走れ今よ 燃え崩れる城よ
それが死病への口火
それこそが壌色の硫黄島へ到り、
忘れ得ぬ花束は自ずから装置となる筈、
葛藤の旧き悪しき日々よ さらば
日がな便りを懇願し
老いさらばえた朽扉から
一過性脳虚血その絶え絶えと見る敷居をぬけて
変声期の穢濁にも似た
鬱蒼樹林に圧し掛かる天使長の涙、庖丁よ
抒情の距離を跨ぐ家父
迷妄
総ては井戸に放られた地球と呼ばれる石塊の、水晶の序夜なればこそ花序にさえ伝染を来す、
シリアの双子イスラエルよ

焦土は戦争記録写真に罅割れ、
       嵌め込まれていた



※以下、保管庫の焼失に拠り、記載なし。

文学極道

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