起伏の眠る、山は海
(希望は耳を通り過ぎる)
往来の山に、風は吹く
(采の目は続かない)
点橙虫は、導べの成り損ない
(右腕に、留まった)
不意の中で血管は伸ばされて、
繋がらない冬は目を回る。
震源の無くなった道を踏み潰して、
気管肢の湿気は脆くなる。
前転したまま深青を目指す島の群れ、
巻き戻す日々の跳弾を飲み干して、
迷路を作った偶像の、その中心を喰らふ。
酩酊を前にした動物園の、
右端に住まう。
手持ちの金貨と、明後日の銀貨
再度落ちた、鈍色の、繭
底抜けの血溜まりの、深度は一寸
耳に触った、女の爪の、欠けた模様
記しとなった蝶の心臓の、その静謐の音に
少女が一人、手を伸ばす。
無一文になる少年を前にした稜線と、
不義理であることを願おうとするその傲慢と、
虹の境界で会ってはならない。
見えざる手とは、私のことだ。
球は、動かねばならない
球は、留めなければならない
球は、最後を知らなければならない
球は、不文律でなければならない
球は、歩いてはならない
球は、私たちを纏わねばならない
球は、僕たちを忘れねばならない
球は円
球は玉
球は、側面、を拒絶しなければならない
球は、目の前に、
球は、背後の前に、
目の奥の、泡、と呼ばれた、溝の辺り
最後の眠りがやってくる、その門の下
薙ぎ倒される提灯の群れを見た
小さな小さな、供物の子豚
手を引いて、声を連れて、耳は澄む
不死の山を乗り越える
木の一本が、目を閉じる。
立つことが、目の前で、おわる。
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選出作品
作品 - 20200303_248_11739p
- [優] 表裏 - 黒羽 黎斗 (2020-03)
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表裏
黒羽 黎斗