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作品 - 20191212_294_11613p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


櫻の樹

  鷹枕可

花うつくしくいき急ぐ
爛れた歴史その傍らに降り散らされつつ
人を乞う、縁の花よ
緑蔭、濠を泛ぶ
花筏に湛えつつうつろえる、一日
そを人間と呼ぶ

「河縁には櫻の樹がズーッとつづいていてさ、凄いんだよ、絶景だった、墓地に枝垂れてて。
 雀がいた、水鳥もいた。なつかしいな、エエ、懐かしいあの河は今も」

埋め立てられた、疾うに

「豪雨にいきりたっちゃって、
 アリャア凄まじかった、丁度台風が来ててさ、一面が濁流なの。あれより恐ろしい河の貌ってのをみたことないね」

流れる様に、吐く様に 

「何が性懲りもないってなら、大晦日ですよ、一本も電車がね、うごいてないの、運休で。雪がドカドカ降ったからさ、駅で立ち往生ですよ。
 フザケンジャアねえッて、駅員さんも俺も、雪みどろで。ほんと馬鹿ばっかりしてましたよ、でもさ、若いってのはそう言う事なんだろね。」

肉声を
風こそぎ、仮借なく鈍く挽く
切株に 
且て旧きわかもの背を預けつつ
晩鐘を
吾こそを死に駆けて
確められ
今や

一日を孤独に融けゆくごとく

皆迄もを吾は踏み躙り
全て命脈の浅はかなる時を
枯れ枝の
矜持は孰処に、
旧り 
降る花かとぞ、

袖振る所縁も所縁ならまし

文学極道

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