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作品 - 20191121_938_11572p

  • [佳]  忘失 - 鷹枕可  (2019-11)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


忘失

  鷹枕可

それでも生きようとした
別れゆく時には 誰もがそうなる
銅の夕から 
懐中に、名残を取り出し
皺塗れの紙屑を広げ
旧い記憶を 紙屑につづらんとする
<癌化した精神には、昼が旧い絶望の様に開かれている>
捨てられた 
レシプロエンジンが 空という絨緞を縫い駈けていた日々
自転車が 百年を晒されて 錆びた骨を仰向けていた日々
風と切り結ぶ淡い梢の花々が 運河に濠に流れていた日々

庭に蒔く、
足跡には生きていた亡命が
その闘争に流麗な誰でもない、自由を臨み、
倒れゆく、革命への
制圧に、
断絶を、拘留を徹底され
<そしてかれらは何事も無かったかの様に通り過ぎる>
政府からは刻薄な沈静が、
眠りの内に
通達され、
捕縛され――或は射殺された、
青い果敢な徒花達へ 贈るものなどは、ひとつとして、

別れゆく時には 誰もがそうなる、
夕の畔に、一粒の嘱望を培い、
落日の咽喉迄を緘らんとする
誰にもなれず 従って誰でもあった 
青年期達への、短い 追悼より
そして 
降り頻る火の粉に追われる且てのはらからへ告ぐ 振り返るな、走れ と
それでも生きようとした、凡庸なるが為に、
逞しく 駆けぬけてゆく巨茴香を 指揮灯にして、 

所詮、他人事だったと
哂うなら
哂え




指揮灯=聖火リレーに於ける松明を造語化した物。

文学極道

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