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作品 - 20190824_715_11408p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


日記の詩

  霜田明

1.

無性に日記が書きたくなることがある
自分の大きさを確かめたくなるとき

人の言葉をきっかけに反感や不安が起こり
しかしふと冷静になって感情から身を離してみたとき

日記を読み返すことほど卑小な時間はなくて
一月経った頃破り捨ててしまう

過去は雨水のように棄てられていかない
棄てられてほしいという願望が影のようについてくる

2.

ひとの言葉について
考えながら帰った

真実が存在しないのならば
言葉の威力の理由はどこにあるのだろう

友部正人の歌の詞をときどき読み返す
他の歌手に比して一人だけ飛び抜けている

似たようなものと見なされているものの中に
飛び抜けたものを見つけるとなぜだか無性に恐ろしくなってしまう

1.

他人の不幸がなにげない顔でやってきて
部屋の隅に腰掛ける

不幸ですか?と聞くと不幸ですという
でもあなたはどうですか?と聞き返してくれないから

僕と不幸との関係は発展しない

2.

もっと、もっと、なんだよ
君が何かを成そうとしているならば

「良い」と見なせるものなんて
この世にいくらでもある

それでもこの世に背を向けたくなって
あれもこれも駄目だとさえ言いたくなるんじゃないのか

「良さ」なんかでは終われない
もっと、もっと、もっと、なんだ

1.

ありがとうと
どうもありがとうの違いはなんだろう

2.

すべての笑いは笑ってくださいという他者のメッセージに
無意識が応えようとする働きに由来する

存在は共鳴になれない
共鳴へのあこがれが表現を生む

失敗を笑う現象さえ失敗を笑ってあげようという
ある種の歩み寄りによって生まれている

3.

美しい女が抱きたいんじゃなくて
美しい女を抱く男に嫉妬しているんだ

嫉妬を引き算できるならば
残った価値はちょうど0になる

引き算を強いて諦めてでも持続する、
それが男性というものの根源だ

文学極道

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