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作品 - 20190810_531_11386p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


春も秋も

  鷹枕可


壜詰めの薬箋紙
乾花
抛られたピアノの鍵
_
_

日没、そして
空の翼にまどろみながら
山鳩の孤独に
預けた
もどることのない、
霜鬩ぐ野への夜想もつかの間に

印象、耳の襞
向日葵、
群衆
あなたは
いつからそこに立っていたの
機械的な
感傷への排斥を肯うことなく
端整な円柱の様に
在る
ときのなか

今迄を
その樹は
白い鐘楼は
鳥達のゆりかごだった
あまりにも重たげな
燃える釣鐘、
花熟れる樹にも鉛の残酷なベルが過ぎ、
真鍮の天使群が円時計のなか
墜ち、或は昇り
街にも燈が灯る
一日を
永遠の疵が刻む頃に、

印象、その最期のひとみ
優しげな母とその子を
枯葉の林の抜道を
秘密の木蔭を
淡く眩く
時に淋しく降る、
陽のはなびらは

現を夢見た、

こころみられた
山鳩の声
それは
亙る梢、風のさざめき
あなたのいつくしみを受けて

春も秋もあなたをおもう

文学極道

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