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作品 - 20190731_349_11355p

  • [佳]  眩暈 - 帆場蔵人  (2019-07)

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眩暈

  帆場蔵人

前庭に鯨が打ち上げられて
砂が、チョウ砂が舞い上がれば
世界は揺れて空と大地は
ぐわぁんぐわぁんと回転しながら
遠ざかったり近づいたり

もしチョウ砂が黄砂のように
気流に乗るなら、あの港をぬけて
沖へ沖へと耳は運ばれて大海を
泳ぐ魚たちの仲間入りができるだろうか

セミとザトウを獲っていた親戚から
もらった耳石は片方しかなかったので
鯨になり損なってしまった

そしてチョウ砂が舞う日は
三つの耳石が共鳴りをして
僕は前庭器官でダンスする
壁と天井と床を掴むように
ひとり踊る聴砂が舞う日に

ベランダから身を乗り出して
海を懐かしむ打ち上げられた鯨の耳

文学極道

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