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作品 - 20190720_125_11328p

  • [優]   - 黒羽 黎斗  (2019-07)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  黒羽 黎斗

並び立つ山は山なんかではない
(雷光の刹那の逆転)
吹き下ろされた風は山のせいではない
(省略されるべき引力の定型文)
半径の整わない火山は己の業
(小走りになった少年、私は青年)
極地に吹き荒れる風は偶然に寒い
海溝に潜んでいたものを取り上げる時
魚の内蔵は食べてしまい、
魚の骨は空に振り撒かれ、
クジラの肉ばかりが細切れの弾力になっていく
サンゴ礁の気まぐれな声が歯を擦る
鼻に抜けるのは鹿の血の臭いだったりする

胸骨の内側で太陽が裏返しになって
二の腕の内側で朧な天体が嘆息の中で爆裂する
口を通過するのは太陽と、第二の太陽の体温

電線が絡まり絡まって生まれた金属の圧縮と伸縮の均衡
中心を持たない軌道に持たされた平均の糸
いずれ絡まってしまう水面からほど遠い圧力の中で
分断を恐れるから生まれた不可視の毬
水はその中を通って水流を留めることを忘れていく
毬を解き、毬を固め、毬になる水流が生まれてしまう
(太陽を知らない、山を模したりなんかしない)
(太陽は潜む、山はモチーフにならないまま補う一助となる)

金が必要である。金が棺を作る。金が反射されている。

細い細い糸を経由してしまうのは面倒だから産道を通ろう
なぜか右に行った後、なぜか少しだけ左に行って、急に空間を持つのだ。
みんな怠惰なのだから、それだから一本道を通るのだ。

目の前に肉がある。鳥が墜ちた。
目の前に肉がある。跳ね上げられた飛沫の一粒だった。
目の前に肉がある。整列された誰かの行動、一端の中
目の前に肉がある。右腕がそこにある。

僕たちは千切れようとしている。
私たちは繋ぎとめようとする。
僕たちは詩を書きたくなんかない。
私たちは詩を書かなければならない。
僕たちは嫌われたことが美徳であるのさ。
私たちは彼らに好まれていなければならない。
僕たちは座り込んで考えねばならない。
私たちは走りながら自分の胸を刺さねばならない。

緊張なんて、毬の中で、跳ねるから生まれる、金魚の糞の、それのよう
景観が生まれている。事実は嫌われていると、ほろり、と、放り投げられていた。

張力は強い。強いけど、弱く弱くあり得るから、強く強く、緊張していれた。
目の前に、肉が、ある。
口の中に肉がある。
先端の緊張、推進力、衰退されない、肉、
歯は引っかかって、肺に、螺旋.

空が回るには、絡繰りの軋轢の中で、近似値の受容、への、嫌悪で
左腕の皮膚を喩えないといけない。

絡繰りの、空回りは、起きない。

文学極道

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