一月
早朝7:00過ぎ
マンションの
消えた電灯の下
1階の廊下の角
一台の車椅子
太いコードを
差し込み
バッテリーを補充する
赤色ランプが点る
きみはまだ
布団の上
シーツを被る
ドアを開け
部屋の明かりをつけ
先輩とぼくが
挨拶の言葉を掛ける
こんもり盛り上がる山
ぐにゃぐにゃ
うごめく生き物
キッチンに立ち
フライパンを温め
卵を落とす頃
部屋の中から騒がしい
人の声が広がってくる
頭だけをシーツから出し
きみはテレビに向かい
M-1グランプリ
を見ながらゲラゲラ
フライパンを持ち上げ
先輩が焼いて見せる
卵がじりじり
少しづつ朝が
目覚めはじめてくる
・
カーテンを閉ざした部屋の
半開きの扉が開く
キッチンを這って
バスルームへきみは向かう
裸ん坊のきみの背に
シャワー水が打たれ
流れ
皿の上に
リクエストの
朝食があり
部屋に戻った
きみは
大きな青い桶
に尻を入れて
閉ざされた扉の向こうで
声もなくただ
しばらくして
先輩とぼくが桶を持ち
便所に入る
木のヘラを使い
うんちを掬い
便器に落とす
先輩は掬ったうんちを
便器に擦り続ける
ぼくがヘラで掬いながら
一気に落とす
オー グッドアイデア!と
先輩が
静かに囁く
・
仰向けになったままの
きみに下着を着せて
ジーンズを履かせ
シャツを通し
靴下を履かせる
床の上でテレビを見る
きみと
うんちと
ゲラゲラ
を余所に仕上げに入る
オーブンを開け
トーストを入れ
ポットから湯を落とし
コーヒーを淹れる
テーブルの上に
三つのカップが並び
焼き上がる
キッチンから運ばれた
目玉焼きを乗せる
ぎこちない若い手を
ゆっくり運びきみは食べる
先輩とぼくと
カップを手にテレビを見る
カリカリと砕かれていく
トースト
カーテンも
先輩も
笑う
・
ショルダーバッグを掛け
テレビを消し
明かりを消し
部屋を出る
車椅子を運転し
スロープを下り
国道沿いの歩道を
北に進む
角の郵便局で
光熱費の支払いを済ませ
駅に向かう
きみのバンドの話
カノジョの話
横断歩道を
渡る
陽光の中
たどり着いた
地下鉄の
エレベーターに乗り
電車に乗り
仲間たちの待つ
場所へと
・
優勝は
笑い飯
賞金は
一千万
選出作品
作品 - 20190626_800_11285p
- [優] Morning - 湯煙 (2019-06)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
Morning
湯煙