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作品 - 20190612_422_11264p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


倒れゆく馬をみた

  帆場蔵人

あれはいつだったか
陽炎にゆれながら倒れゆく馬をみた
北の牧場をさまよったときか
競馬場のターフであったかもしれない
或いは夢か、過労死の報を聞いた
快晴の街角であったかもしれない

或いはあの川面にぶつかったときか

なぜ、おまえが倒れたか
なぜ、おまえが息絶える
その眼に何がうつろうか
とおくとおくたくさんの
蹄の音が血をゆらして

あぁ!
もう狂い馬だ、狂い、馬だ
尻に火をつけられて、幸運の前髪を
掴め!と急かされる、皆、狂い馬だ
産めよ、増やせよ、やめてくれ
狂い馬!来るいまだ、走れっ!
鞭がはいる、無知なのがいる
焼き尽くされて、いく、理想とか
正しさ、なんて掴めないものに
尻に火をつけられる毎日だ

川岸でずぶ濡れの身体を抱いて

なぜ、おまえが倒れたか
なぜ、おまえが息絶える
その眼に何がうつろうか
なぜ、なぜ、なぜ、と
もう聞かないでくれ

陽炎のなかに
おまえたちは歩み去る

走る
ことも
働かされる
ことも

なく

もう、なぜ、などと
聞くものがいないところへ
たおれゆく
馬を
うつくしいうまをみた

文学極道

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