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作品 - 20190517_013_11219p

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文学_僕(仮題)

  いけだうし。

終電後のカフェの外は文学に包囲されていた。街の上、ただ白い夜空に登り、曇りを晴らし、ここを廃墟まで粉々に愛し、文学を焼き払い、夜の星と月と青を取り戻したくなった。しかし僕の中のヴィジョンは霞み、ほんとうに欲しかったのはそれだったのか、わからなくなってしまった。しかし、足掻いて、空を飛ぼうとするしかなかった。助走をつけては派手にこけていた。すると文学は僕を抱きとめた。僕は文学とセックスのように溶けあいたかった。手を繋いで、無銭だがラブホに駆け込んだ。純粋も醜さも何もなく、ただそのうまくいかない焦りや、抗いようのない快感、愛していると言うささやきがあった。うまくいかないなりに丁寧に丁寧に愛撫した。はやく挿れたかったが、文学であろうとするそれは、辛抱強く僕を拒み、待った。つまり、受け入れてくれた。僕はなんども独りで射精し、ようやく落ち着いて、また丁寧に愛撫を重ねた。一方それと混ざり合い、一方それと共に行為を見つめる。そういう閉じて、どうしようもない空間に僕は満たされるのだろう。

文学極道

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