たった一寸の闇の中
腕を切り裂いたのは風のせいで
たった一寸の闇の中
涙が雨として降ることはなく
たった一寸の闇の中
一人で会話する客観的主観
たった一寸の闇の中
逃げ場を失うのを自業自得と言われた
たった一筋の光の中
不死鳥は初めての死を経験する
たった一筋の光の中
背中を合わせた鏡写しの先を掴む
たった一筋の光の中
ひたすらまっすぐな尊敬を刺す
たった一筋の光の中
重なった自分を疑いはしない
苛立ちを初めて覚えた憎しみを
快楽を初めて覚えた焦燥を
もう一度流し込んだこの硝子細工には
太陽光の赤の光が
知覚できない存在でした
たった二文字の言葉から
五文字が浮かぶ悲哀の最中
たった二文字の言葉から
数えきれない叫びが産まれた
たった二文字の言葉を語る
少女の涙は川岸で腐る
星降る夜の瞳に映る明滅こそが
一つの種を孵すのでしょう
あぁいかにも悲しい話だったが
あぁつまらない喜劇でした
語らう言葉を失ってはいけない
地に足つかない言葉の中から
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選出作品
作品 - 20190430_792_11193p
- [佳] 幻を信じよう - 黒羽 黎斗 (2019-04)
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幻を信じよう
黒羽 黎斗