海の中の貝が
すべて心を閉ざしているのなら
真実は海底へと潜っていくだろう
貝は静かに砂に身を置き
塩辛い海水の中の養分を
ぱくりぱくりとつぶやくように
食べている
貝は夢を食べ
砂とともに時を過ごし
塩辛い水に身を浸して
その夢ごと貝殻に閉じ込めて
なめらかに生涯を終える
※
テトラポットに打ちつける波が
なにかの爆裂音のようで
心音とともに カモメの低空飛行を見ていた
きっと波の中の空気がわだかまり
雪のような泡となって
未だ冷たい春に怯えている
水平線のはざかいで
船が浮かんでいる
いずれ視界から消えるであろう船の上を
海の生ぐさいにおいに促されて
多くの海鳥が飛翔している
流れ着いた漂流物を眺めながら
僕たちの宝物の話をしに
君を誘う日が
来るかもしれない
貝の声がとどく日に
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選出作品
作品 - 20190425_745_11185p
- [優] 海へ - 山人 (2019-04)
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海へ
山人