今日も生活が難しい。
金銭のことなど考える余裕もなく、生活という営みそのものが難しい。
『睡眠ニ自由ヲ!!』
『規律アル生活ニ終止符ヲ!!』
先ず、朝とは何であるか。
僅かな布の間隙から漏れ出す陽の光がじんわりと表皮を温める中、この微睡みを振り払うことが出来ようか。
掛け毛布と敷き毛布の間に挟まり、なされるかどうかも分からぬ食事のことだけを考える生活のほかに、幸福と呼べるものなど果たしてあるのだろうか。
またしても振り払えなかった微睡みの中で、肉体を失い、ディジタル信号の集合体による擬似思念として生きるという、妄想とも夢ともわからぬ体験をする。
デヴァイスの劣化と共に処理に不都合が現れるようになれば、また別のデヴァイスへと移植され、ムウア則にしたがって断続的に思索の性能が向上するのだ。
水槽の脳に比して更に永久的に、神経に代わる回路をズンズンと肥大させていくのだ。
その世界で私は、どうしてスケジウルされたとおりに起動されねばならぬのだ!、と嘆いているのである。
幾度かの白昼夢の後にのどが湿り気を失って、さらなる微睡みに身を委ねることを泣く泣く諦める。
世俗の言う朝というものに比して光量の減っているのに気づき、観念して布の間隙から外を見れば、忌々しくも雨が降っている。
過剰なまでの惰眠の先にある緊張型頭痛と、気圧の低下に伴う偏頭痛の複合に悶えつつも布団から這い出てみれば、そこかしこに散らかった空のペツトボトルが床上を見事に占拠している。
嗚呼、生活は難しい。
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作品 - 20190401_434_11140p
- [佳] 生活 - 山田はつき (2019-04)
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生活
山田はつき