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作品 - 20190326_380_11134p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


朝、ホオジロは鳴いていた

  山人

父は固まりかけた膿を溶かし
排出するために発狂している
脳の中に落とし込まれた不穏な一滴が
とぐろを巻き、痛みをともない
いたたまれなくなると腫れ物ができる
透明で黙り込んだ液体を
父は胃に落とし込む
体の中に次々と落とし込まれる液体のそれぞれが
着火しエンジンを稼働させ
そのすさまじい熱量が怨念となってさらに引火し
いくつもの数えきれない父の仔虫が
いたるところに蠢きながら断末魔の声を発している
仔虫は幾千の数となって床を這いまわり
父の怒声から次々と生まれては死亡している
       ※
真冬、季節は発狂していた
冬という代名詞は失せ、無造作な温暖が徘徊していた
あたかもそれは衝動的な狂いではなく
ひたひたとあらゆる常識の礫が破壊され
あきらかに季節は発情を迎えていた
消沈した寒さは時々痛みを加えるが
その底に居座るのは穏やかな発狂であった
       ※
寝息が不快な音源となり
目が沙え眠れない夜
黒く闇は脳内に穿孔し
糜爛した傷口から生み出される不安
それらは正常なものから逸脱したやわらかな異常
狂いはしずしずと執り行われ
負の同志を増殖させ穏やかに発狂している
       ※
目指すは美しい発狂ではないのか
古い病院の鉄のにおいや
メチルアルコールのにおいではないだろう
リノニュームから逃れたところに田園はある
ところどころ雑草が生え、そこに
見たことのない美しい花が発狂しているではないか

文学極道

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