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作品 - 20190318_305_11124p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


都市標本『現在形』

  鷹枕可

_I,刺繍

機械仕掛のゴチック文字に
凡ゆる均整
分水嶺に隔てて
顕ち
言葉とは言葉と言葉の言葉を
円環劇場に
統べながら統べられる
私自身の俳優であり
装置である
死者の綴れ織りに
紡績アラベスク
それら自明の縁堰に
建つ鋳鉄の時計に拠って
私を私たらしめる
矮小な
一つの機関を起源として


_II,成長

種の殻、
ひとを問え、
一粒の死であれ経験の過程であれ
蛍揺籠
文字の永続は
つまり
未誕生を
夢想創造し已まない
単性繁殖をこころみつづける
現象の夢を漕ぐ
幾多の花粉界であって
また、
安寧は植物時計の睡眠季に
存続、
その靴跡を
はつかに遺して、ゆけ


_III,東京裁判、或は政治家達の秘密の隧道、

プロパガンダの中で黒く美しい劇場は凡庸な平均的存在に燃えている
それは取り戻された蠍の心臓だった
それは死線の絶間無き蹂躙だった
薔薇色の喝采と高揚を受けて党歌は公衆の歌となった
孤絶が私を択んだ様に
あなたは黒い紛糾に択ばれたのだ、

_IV,――

私 絶鳴の闇
私 黎初の鳴鏑‐鏡
私 死に孵り
私 命に到らぬわたし視る釣鐘ひとみ一つきり
死の花‐黒い椿花婦
美しく皺嗄れた一束の婚礼衣類
散る散る散りながら耀いて 死せよ



*本文はtwitter掲載詩に加筆、訂正したものです。

文学極道

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