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作品 - 20190114_162_11000p

  • [優]   - まじまっ  (2019-01)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  まじまっ




ぺぶはベッドで絵を描いている、する事がないものだから、私はじゃがりこを噛んでいる。カリカリと前歯で噛むかグシャリと奥歯で噛むか、そのどちらが美味しいのかを考えている、ふりをする。ぺぶは今日はお休みなの、うん、だから絵を描いているの、そうだよ、人や犬を黒く描くと心配してもらえるんだ。ぺぶの色鉛筆には黒がない。もらった学校用の鉛筆でガリガリと塗りつぶしている。私はじゃがりこを、ぺぶは人をガリガリガリガリって。同じ事だね、そうなの?透けるような瞳でぺぶが問いかける。うんそうだよ。傷があったでしょう、薬は塗ったの?ぺぶはやさしい、髪の毛の匂いは香ばしくてドキドキするんだ。うん、血が出てたけどもう大丈夫。入れるなっていったのに、入れる馬鹿がいてさ、生理のふりをしてズル休みができたら最高だね。でもオモニは敏感だから、バレちゃうね。ばれたら大変だよ。ぺぶはいいの?私は休みだもん。一緒に休むためだから許して、ってオモニににいえる?言えないね。笑って、あれ、なんの話をしていたっけ。


ぬるまっこい空気が淀んでいるようで、心地よい。ぷっくり鼻に汗の水玉を浮かべて、ペロリと舐めてくれるぺぶはやっぱり優しい。無心に絵を描いて、それが終わる前に私はじゃがりこを食べ終わって、うーうー唸って退屈を表現する。あなたは役者ね、つい騙されちゃうわ。この国はとても冷たい。外気に触れるまでは私たちの汗はわたしたちの汗として交わって、とても入り込めない匂いの檻を作る。逃げられないのにどうして檻を作るんだろう。私はぺぶがすき。だからぺぶを逃さないようにそうするのだ。
イルボンがね、うん。ブログ見たってやってくるの。ぺぶはわたしよりもずいぶん大きな乳をしているから喜ばれるね。三人でするのが好きってイルボン、変だよね。ふふ、ハジもそのうち大きくなるよ、大きくてもねぇ。女は昔っからこうだったから。そうなの?ぺぶは時折無口になる。わたしたちの乳はけして子供を育てるためには使われない。ぺぶは犬がすきなの?急にどうしたの、この絵、犬だけが空色で、とても不思議な気がするんだ。そう。犬は空を飛べないよ、ふふふ、しってるよ、そんな事。だから犬にお空を描いたの?ぺぶは悲しそうに微笑んで、そうしてじゃがりこがない事に気づいて私をペチンと叩いた。


じゃあね、ぺぶ、行ってくる。はちみつ色の時間は誰かの意思で別の何か濁った色に塗りつぶされる。ぺぶ、どこにもいかないよね、あたりまえじゃない、そうか、でも、どっかいっちゃいそうだったんだ、ばかね、どこにも、いけないのよ、そうね、そうだ、知っている知っているけれど、ぺぶの髪はどこまでも黒くて、つやつやでこうばしい匂いがするんだもの。だから、どこにもいかないで、泣きそうな顔で言ってたのかな、ぺぶは笑って手を振っていた。


コートを巻きつけて外に出る、寒い。下の毛はちょっとだけ残してあとはきれいなもんだ、オモニはいつも通りの顔でぶれることなく10番、っていう。仏頂面選手権があったらきっとこの国では一番だ。さてさて、手首に10番をさげたのが私の飼い主、ぺぶの描いた空色の犬が私の心におしっこをひっかける。ひゃあ、寒い。けど、クリームを鎧代わりに塗りつけて、鳥肌を隠して私はエレベーターに乗り込んだ。一から十まで、それこそ何百と何千と同じ事を繰り返して、私の乳首に這うこのくちびるがぺぶのものだったらね。空色の犬は、飛びもしないしでも窓みたいだった、犬の姿で犯されながら、私は窓を開ける。ぺぶ、そこには緑色の草原があって、そこには犬と同じ空色の屋根をした小屋があって、狭いけれどふたりで住むには丁度いいね、ほら、オンドルもあるから凍えなくていい。小屋の後ろには水車もついていて小麦を引くのにも問題はない。オランダみたいだね、ばか、オランダは風車だよ、そうか、風の気持ちいいこの部屋できょうからふたりっきりなんだね、美味しいパンを焼こうよ、あらじゃがりこは焼けないよ、あんなイルボンの食べ物は食べなくてもいいから。抱きしめる、ぺぶはかわらずあったかくて柔らかくて素敵だ、今日から二人っきりだね、ぺぶは微笑んで、ベッドは別にしようねって言ってくる、やだよ、寂しいじゃない、私を捕まえられたら、一緒に寝てあげる、ぺぶの足は早い、でも、なんとか捕まえて、懐かしい、匂いのする、草原に、二人して、倒れこむ、もう、離さないから、ぺぶが、私を、くすぐる、なに、するのよ、えっち、なんてはしゃいで、そうしてオモニから電話が来る。うん、問題ない。終わった。


チムジルバンのふたりの部屋にぺぶはいなかった。部屋にはぺぶの描いた絵と食べ終わったじゃがりこのカップが転がっている。この国はとても寒い。絵は空色の犬だけが綺麗に切り取られていて、それを見た私はもしかすると微笑んでいたのかもしれない

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