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作品 - 20181031_503_10851p

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テレビジョン

  ゼンメツ

最近ひとんちがそこかしこでぶっ潰れてる。そんなニュースが、うちの薄型テレビの画面にすっぽり収まってて、わたしたちはそれを家族そろって眺めながら、晩ご飯を食べます。きらいな具の入ったお味噌汁、ぐずぐずに潰されたお豆腐の意味が、ミジンも理解できない。父さんは何をしていても深刻な顔をしているし、母さんは何もしていなくても忙しそう。わたしは黙ってスマホを握って、ツイッターを開いたら、やっぱりわりとそこら中からセイサンな状況報告が浮かんできて、そのままわたしのめのまえを流れすぎていく。食事中にスマホを見るのはやめなさい。でも父さん、ぶっ潰れた家のとなりには目撃者たちの住むマンションが建っているから。聞いてるのか? フジサンが見えるくらい巨大なやつが。スマホを置きなさい。お味噌汁なんてぜんぶ流してやりたい。隣のマンションぜんぶがぐずぐずにぶっ潰れたら、うちからもいろいろ見渡せると思うんだけど。

近所のナラセさんとこの娘さん、この後の番組に出るんですって、ご近所じゅうに話してたわよ。そりゃ凄いな、おまえも将来テレビに出られるくらい立派になれよ。そんなこと言われてもね。番組が始まると、ナラセさんとこの名前も知らないお姉さんが、見切れるほどいっぱい集められた水着の女性の中の一人で、際どいポーズで、バランスボール乗ってるのを、父さんも母さんも真面目な顔して見つめてて、わたしなにもかもを横目で見つめながら、なんかもうぐらぐらしてきちゃって、ぎゅっとスマホ握りしめてるのに、祈るみたいに握りしめてるのに、時間がぜんぜん流れなくって、したら父さんが突然、こういうのは空気を少し抜くと乗りやすくなるのかな。って口にしたあと、しまった、みたいな顔して黙っちゃって、母さんは黙ったままで、わたしはぐらぐらで、今すぐきゃーなんて言いながら、笑顔で足開いてすっ転べたほうが、たぶんきっとよかった。

番組が終わっても、わたしたちはずっとテレビを見てる。正確にはずっとテレビのほうを見つめてる。インスタント麺のへんなノリのCMを、家族みんなして黙りこくったままじっと、もうとっくにタイムラインなんか見失っちゃって、画面の中でラーメンが空へぶっ飛んでくのを、見上げることもなく見つめ続けるしかないわたしたち。いつまでもへんな安っぽい枠のなかで、いっつもぐらぐらのくせして、あたりまえに絡みあってて、熱湯イッパツで都合よくフッカツするのを、じっと待ってる。じっと。

文学極道

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