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作品 - 20181027_158_10841p

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花束とへび

  田中修子

ほら、わたしの胸のまん中に光をすいこむような闇があいていて、
そのうちがわに、花が咲いているでしょう。

ときたま目ぇつむってかおりに訊くんだ、
ああ、この花がうつくしく咲いているのはね
わたしの生き血をすって想い出になってるからなんだよね。

ひとはかんたんに、
かすれた声で
「もう死にます」
という
とてもまっ黒な眸で。

ほんとうはいつだってそうなんだよ
たださ、ひっしに目を逸らしているんだよ

皮を石にこする。じり、じり、とうろこのこげるにおいは、

いままで幾重も、剥いで、剥いで、剥いで、
おまえはいつか現実でみた夢を叶えるのだろう
それはこんな胸のなかでにおいたつ花とはきっと違うんだ
衝動が来たら深呼吸して

生きるんだよ。

こんなみっともない、くだらないからだで這いずってんだ
そうして皺が増えたわたしを、
ゆびさして笑え。

老いてとぐろを巻く、わたしの内側で、
別れたあの日のまんま、淡い輝きをはなつ花が
甘えて、眠っている。

文学極道

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