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作品 - 20181008_341_10801p

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名も知らぬ国

  田中修子

to belong to
ということばのひびきはあこがれだ
(父のキングス・イングリッシュはほんとうにうつくしい)

遠い、遠い
名も知らぬ
国を想うように
to belong toをくちずさむ

遠い 遠い あこがれの
魚泳ぐきらめく碧い海にも
雪の白にも染まる山にも近い
カフェがある図書館がある老人も子どもも遊んでいる

そこにははまだ ゆけぬよう
目をひらけば文字の浜辺
打ち上げられたひとびとの
よこがおを盗みみる
みなちょっぴり孤独に退屈している顔をしていた
そうか、わたしはここからきたのだ そうしてどこかにゆくのか
それでよろしい

遠い、遠い わたしのなかに在る国の
男たちは労働のあいまカフェで珈琲をのみ庭の手入れをしている
女たちは子育てして洗濯物をはためかせ繕い物をして花を飾っている
読書は雨の日のぜいたくだ
その街角にながれる
なつかしいはやり歌をうたうように

to belong toを口ずさむ わたしのはつおんはよろしくない

文学極道

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