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作品 - 20180807_702_10660p

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にがい いたみ

  田中修子

乱れ散る言葉らに真白く手まねきされる
祖母の 真珠の 首飾り 記憶の そこ 
瞼のうらの真暗闇 ここからどこへいく
(扉が開き 一階ずつ 降りていきます)
(目覚めたらおそろしいことは忘れます)
ルビーの靴の踵が 黄色い煉瓦をふんだ
バッヘルベルのカノンが鳴り響いている
幾度も乱反射する蓮華の花言葉は約束よ
式子内親王が笑い崩れながら叫んでいる
「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば」
(三、二、一) しろいへや に目覚めた
からだは硬直している先生がのぞきこむ
狭い窓 夏の暮は大火 焼ける赤い雲の
けむに まかれて まばたきするたびに
一番 底で みたはずの幻に 喰われた
いますか ここにいますか ここは現か
道草に散らばる 四つん這い で探した
踵を 鳴らす 首飾り 見つけて下さい
コツコツコツ あの日日に帰りたくって
煉瓦道に祖母の熱い骨が散らばっていた

エレベーターに蹲って夢を見ております

文学極道

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