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作品 - 20180724_891_10619p

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e2.(黒スグリを擦りつけた壁に映える一輪の。

  脈搏



染み出していくたびに抜け落ちていく。吐き出すたびに産まれてくる。飽和した会話のレ、と、ラ、を溶かしこんで、フロアに熱帯魚が泳ぐ。鱗が光を乱反射する。撃ち込まれて息を止めたら負けだ。名前も知らない観葉樹に君をこぼして、口唇を躱すのだ。夏や秋、冬それから春、閉じ込められる事を望むように人工のソラを見上げる。周遊するいくつもの星に願いなんて届かない。トイレで誰かが交尾をしてる。そしてその横で喉奥を中指で犯し続ける。染み出していくたびに抜け落ちていく。吐き出すたびに産まれてくる。G線上を曖昧に通り過ぎるだけ。叫び声ともつかない嬌声が粗雑に僕と君を編み込んでいく。


アイロンを買った。シーツに地図を描くように滑らせる。ベッドの端と端にいる王子さまとお姫さまは出逢わない。知らない背中に押し潰されて、きっと死んでしまうんだね。熱が冷めたら海になる。髪の毛が一本皺に隠れてる。出ておいで、他人のように問いかける。揺らめく植物ように、静かならよかった。


誰もいない駅舎の壁、グラフィティに知っている顔を探す。割れた鏡の肉質に救われて、ようやく切り出した身体。血管には透明な時間が脈を打ち、つま先から耳朶まで窒素を送りこんでゆく。慣れない歌を口ずさみ誰かに似た僕の死を君に捧げたら、先行した言葉を脱ぎ捨てて、靴擦れに絆創膏を貼ろう。


猜疑心にまかせて脳に降りしきる灰色を筆にのせた。暗い収穫に曲げる背。烟る背景に太い線を走らせて、コンビニの光って眩しすぎるって思う。渇きに言い換えたけものを柔らかく追い立てて、甘すぎる言葉を啜ろう。敏感な突起を探りあて、光を灯したら、未分化な僕の舌が先鋭すぎる聴覚を曇らせて、レ、と、ラ、そしてソを溶かし込むだろう。一枚ずつ剥がれて言葉の海に揺蕩う咎、なんてシャワーを浴びて。転がした寂しさを詩人はなんて名付けるのだろうか。


僕と君の企みは未遂のまま夜明けを迎える。弔うほどの明るさに鎖された、遠のいていく騙りにただただ満たされていく。他者性なんて難しい言葉は知らない、ハンバーガーを噛むようにして君を飲み込むんだ。帳が降りるように丁寧に塗りこまれていく黒スグリの香りが、僕から駆け出して、君の亡骸を痕跡へと変えていく。

文学極道

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