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作品 - 20180721_771_10611p

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月の花

  あおい

月の花                  あおい満月

さまよえる森のなかに
一軒の古びた洋館を見
つけた洋館のなかには
まだうら若い娘がいた
娘は綺麗な白いドレス
を着て座っていた娘に
は両足がなかった娘の
からだは鎖でがんじが
らめになっていたけれ
ど娘は微笑んでいた自
分のなかには信じるも
のがあるから生きられ
るそのたったひとつの
思いを信じてするとあ
る晩のことだった一羽
の鴉が洋館の窓を突き
破り娘の元にやってき
た娘は黒いものが苦手
だったのではじめは鴉
を毛嫌いしたけれど夜
毎鴉は娘の元にやって
きた鴉は言ったなぜ僕
を毛嫌いするのかと鴉
は言った世の中は白い
ものがすべてではない
黒いもののなかにこそ
本当の白さがあるのだ
とだが娘はなかなか聞
き入れようとはしない
あろうことか娘は自分
の手の甲に止まった鴉
の頸を掴んでねじ伏せ
た鴉は息絶えたそのと
き娘ははじめて自分の
愚かさに気がついたそ
してみるみるうちに涙
がこぼれたその涙が鴉
のからだに落ちたその
瞬間鴉は美しい男性に
なり娘の手をとったす
ると娘のなかったはず
の足があった自分は歩
けるようになったのだ
娘は歓喜し男性に口づ
けをした二人は溶け合
い夜空を照らす月の花
になった花はいつまで
も暗い夜のなかで咲き
風に揺れていた風はあ
たたかく夜を染めた。

文学極道

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