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作品 - 20180604_119_10499p

  • [優]  (無題) - Migikata  (2018-06)

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(無題)

  Migikata

鳩の羽根が落ちて、蜘蛛の巣に引っかかっている。
主のない蜘蛛の巣の残骸に、羽根が一枚引っかかったまま、秋の風に吹かれていたのだった。
微風である。
秋の風を俳句の季語で金風という。つまり、羽根が金風に吹かれて微かに動いていたということだ。

通りの向かい側の中学校の校舎。同じ風に、四階の教室の窓から外へはみ出したカーテンも、吹かれていた。

こちらは遮るもののない風に煽られ、高く盛大に吹かれている。
さて鳩の羽根は銀行のビルと雑居ビルとの間、その地上に極近い位置にあったのだが。
吹かれて細かな揺れを繰り返していた。
羽根自体が生きているように見えもする。とはいえ、生きているものが目的を持ってする動きとそれは異なる。

わずかな違和感が生と死を分かっている。この羽根を落とした鳩の本体に思いを巡らせれば、ここにない羽音も聞こえる。

羽根を落としていった鳩はまだ生きているのか。どうなのか。
彼の肉体を今、この時に動かしているのは、
(1)有機的に統一された部位の連関によるもの
(2)天文地文に働く巨大な物理現象の一端に連なるもの
このどちらだろうか
そんな疑問そのものとなった僕が、空中を浮遊する様子が見えている。

現在から既に少し過去にずれ込んでしまった僕の疑問が、実際の僕よりも僕らしい体をまとって街路をさまよっているようなのだ。

勿論それは妄想に類するものであるが、人から切れて離れた妄想は、人に吹き付けるあらゆる風から逃れ得ている。

文学極道

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