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作品 - 20180601_900_10490p

  • [佳]  部屋 - 朝顔  (2018-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


部屋

  朝顔

私は塔に住んでいた
いろんな小人が
訪ねてきたけれども
みんな
どういうわけか
鈍色の
ひき蛙に
変身してしまう

ある時わたしは
母の娘を
部屋に招き入れた
それは私自身ではない
母が昔
美しい騎士と
身ごもったところの
はらからである

彼女はころころと笑い
豊満な乳房をして
私を太い腕で
ぎゅっと抱きしめた
塔の時計は左回りに
動き始め
壁のやもりは
こちらをじっと睨んでいる

私はいつのまにか
大声を上げて
涙を出して泣いた
彼女は満足そうに
りんごのような頬を
さらに丸くして
ワイングラスを傾けて
ぐいっと干した

気のいい
はらからが部屋に
居つくようになって
暫くして
私は塔を出て
皿洗いが特技のやもめの
王子様と
一緒に暮らし始めた

塔は
明るい燈火に
照らされ
荒野で逞しく育ったはらからと
連れ合いと
その連れ子が
平和に
末永く暮らした

私が
今ペンを取っているのは
街中の
狭い舗道に面した
朝日の入る窓に
洗濯もののなびく
平和で小さな
アパルトマンの
部屋である

文学極道

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