手のひらに
わらいの花が
こぼれていく
風のなかへ
水のなかへ
地のなかへ
誰かのなかへ
ころころ、ころころ、
わらいの花が
私からあふれていって
*
気がつくと
私は地を耕している
枯れ草一面の荒れた畑を
同級生のあなたと一緒に
背が高くて広い背中のあなたが
ここにいのちを吹き込むぞ
とあっという間に畑を作ってしまった
私たちはそこにサツマイモの苗を植えた
**
月日が経って
サツマイモは日に日に大きく
実っていった
そのふくよかなふくらみは
いつか見たわらいの花のようだった
実ったサツマイモを二つに割って
彼は私に手渡してくれた
おまえに似ているよと言って
***
八百屋で売っていたサツマイモを
目にするたび
あの甘くて少し切ない思い出が蘇る
サツマイモを輪切りにして
はちみつとレモンで甘露煮をつくる
甘酸っぱい香りが鼻腔に広がる
私はやっぱり
わらいの花を咲かせてしまう
あの頃は、
涙などまだ1gも知らなくて
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選出作品
作品 - 20180508_946_10428p
- [佳] わらいの花 - あおい (2018-05)
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わらいの花
あおい