朝
誰もいない食卓につくと
清潔な白磁の器には
電子パーツが盛られている
潮の香りがする朝刊を開けば
たちまち燃えあがって戦争がはじまる
言い訳を舌先で転がしていると
プチッと潰れて意味が溢れる
本来なら生きるという行為は
省略も延長も許されていない
本当のイコールなんて
滅多にあるもんじゃないし
そこにたどり着けたとしても
今さら埋葬された靴たちが
再び歩きはじめるわけでもない
「彼女」がリボンを振るたびに
警告音と共に世界がジャムる
鯨のヒゲで稼働する案山子が
クラウドバスターを空に向けると
スポイトの一滴から始まる連鎖反応が
僕たちを背中から手遅れにしていく
(だから鏡の中で振り向いた猫は
殺したはずの女の目をしている)
だいじょうぶ、
だいじょうぶ、
と
「彼女」が母親の声で囁くから
空の半分はママレード色で
まがいものの安心が満ちている
みんなも残り半分から目をそらし
だいじょうぶ、
だいじょうぶ、
と
笑顔で傾いている
なんて素敵な一日の始まり
なんて言葉を彼らは吐き出す
子どもたちはいまだに
廃園のあちらこちらで
パチパチと音を立てて
燃え続けているというのに
選出作品
作品 - 20180409_381_10369p
- [優] モーニングスター - 无 (2018-04)
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モーニングスター
无