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作品 - 20180115_728_10172p

  • [佳]  音信 - 湯煙  (2018-01)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


音信

  湯煙


三年C組
義務教育最後の学校生活
クラスを受け持ったのはあなたでした。

快活な方でありました
自信過剰気味でありどこか昔気質を思わせました
物理を教える理系の出らしく白衣を着こみ
小柄ながらアルトのお声は張りがあり男勝りでした
鼈甲眼鏡の分厚いレンズの向こう側で団栗眼をしばたかせる
あの頃すでに定年を控えていたでしょうか
校内を忙しなく婦人用サンダルを履き練り歩く
口紅とアイシャドーをうすくひいた
生意気なツッパリたちとも堂々と渡りあう
だからだったのでしょう彼らも一目置いていました
そのようなお姿が折に触れ
心中に思い起こされるのです
そして卒業間近だったある日
教室へ行き春の訪れを伝えると
予想を裏切られたか大変に驚かれましたね
しばし唖然とされていました
あなたの眼が見開き私を見つめていました
出来のよくなかった
秀でるものがなかった私の顔に見入っていました

偶然
プライド
ユメ
実力
努力
キボウ 
アコガレ
意地
・・・・・・・・・

今も窓際で
空を見上げています


 年月が流れ私は
 思い出をたずさえて生きています

 その後変わりなく
 御健在であられますでしょうか
 
 卒業以来お会いすることもなく失礼をしています
 
 いつかまたお会いできましたならと
 そう願っています。

文学極道

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