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作品 - 20180111_657_10165p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


在ると無いのはざまで

  鞠ちゃん

お弁当におかずは何がいい?
唐揚げ!なんていう人はカワイイね
カワイイと思われたい40男の思惑はちょっとズルくて新しくて
はじまりは小鬼スタイルの雪合戦だったんだ
ホテルカリフォルニアは焼失した
美しい男の子が鬼の形相で火を放ったからだ
ホテルの女主人は焼け死んだ
もう彼女の引き摺る足は遠景に目立たない
彼女が自分を内心、円を描けないコンパスだと
思っていたことももう重要ではない
ちっぽけであることを抱いた蟻が魂の昇天を思う頃の世界で
悲しみは沈殿し上澄みは鏡となって覗き込む者の顔を映して澄んでいる
彼女の悲願が泥濘から首をもたげて
水面に咲く花になることを夢見たのだ
焼け野原の上を白く古めかしいレェスの
ネグリジェをはためかせて飛ぶ女の幽霊よ
ウルトラマンに憧れた男の子がおじさんになって
プレミアのついたソフビ人形を高値落札している
心を開く鍵はたとえ海の底に深く沈んでいるとしても
それは愛の形をしているのではなかったか
思いが熱なのだ
あまたの思いよ
すすり泣く声をヤスリにして鍵は磨かれる
嘆きがすべての波頭を打ち饒舌が一人酒になるとき
テレビのニュースは他人事だ
料理するっていうのは切り刻むってこと
違う違うよ
愛するように人を思うように食べ物を厳正に扱うことだよ
臭いニンジンを天使にする魔法だよ
牛乳とバターとたくさんのお砂糖に
シナモンとカルダモンで煮てるよ
生きるのが上手そうなお料理の先生は素敵だな
寒気団のドラゴンが舞い降りて
豊かなイメージと貧しいイメージが戦争をする寒い冬の夜だ
穴の開いたビニール袋の中で水は漏れ続けて
金魚が刻々と死の宣告を受けている
金魚の心は愛を知る人には狂おしいが
見た感じは能面なのだ

文学極道

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