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作品 - 20180108_585_10158p

  • [佳]  元旦 - 田中恭平  (2018-01)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


元旦

  田中恭平


カートコバーンのことはもう忘れよう
なんせ僕も三十になってしまった
今年三十一になったら
中原中也も
終わっちまった青春も
精神的コロニーのことも忘れよう
郊外に
ほんとうに
ほんとうに
一人だ
禁煙を破っちまったこころのように
賀正の青い空にすくっと立つしろい煙のように
いまここひとりで年始のことばに代えて書く、詩

皿が沢山在る、
見事に朝の光りに充つ皿が沢山在る
翳っているのは僕の魂だ
まだまだ燻ぶれるとかもうどうでもいいんだ
出世するんだ
忘れられ
しかし望まれる
恵みの雨のようにいいことをするんだ







時計の秒針が崩れ去って
物の壊れることは
こころが荒れているということだから
去年与えられた宿題たちに
解答を与えつづけてゆく
野に出れば
セブンイレブンで買ったアイスキャラメルラテを含みつつ
銀河がとおのいていくように
そしてそれが見えないように
ひとり
谷まで行ってしまう
Sayounara
Sayounara

そうして
また会える頃には
何物も
少しだけ変わっているね
町の変化が激しいと
鎮守の森で唇をさびしくさせながら
朗々と
涙をこらえきれない
爽やかな
爽やかな
新年でありました

涙も涸れきり
血も吐きすぎてしまいました
医師はスプーンを投げました
祖父と祖母にお年玉をくれました
祖父と祖母はその一万円を使わないで
お守りにしているそうです
善鬼神とはほど遠い
この田中恭平が
何よりも勝り難い
苦悩を持っているとして
それは大概
世のみんなが持っていることとして
語らないからわからないことを
今、書き落としてゆきます

兎に角去年も書いたものだった
己の指を頼りに
そして己の耳を何よりの糧として
もう詩人以外に何者とも呼べもしない

社会を勘定に入れれば
最底辺の病者として
かれくさを握り抜いては願いはなった

己の無力さに
言葉 精神の暴走を必死静止させながらの
マインドフルネス瞑想は
冬なのに汗をかいてしまいます

一年中人が好きでした
一人になった今もそう思います

明日から仕事
また朝の三時に起きないといけないとして
毎朝僕は神に祈ろう
ときどきは神の
直感的ダイレクト・メッセージに身を任せてもいい
きみは
きみは一年ただ元気でいたまえ
生きることにあなたは
意味があるのだから、
ないものがそう言っているのだから
本当のことなのだから
嗚呼
センチメンタルな詩文になってしまったな
もっと抒情的にきみに伝えたいことがあった筈なのに






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