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作品 - 20180101_365_10136p

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ダフネー2

  本田憲嵩

つやのある蟻のような円らな瞳で、住みついている栗鼠のようにや
さしく微笑みかける。いま柔らかな月光によって冷ややかにコーテ
ィングされながら、か細く流れる川の音のようにやさしくせせらぐ。
日々の生活の滲みが暗い銀としてこびり付いている、その痩せ細っ
た肢体、黒髪の枝葉を腰の辺りまで繁らせて、しっとりと夜の川の
ように。あるいはさらさらと星くずの散りばめられた煌めく夜空そ
のもののように。穏やかな北風はいま、その見事な臀部を、よりい
っそう冷ややかな球根形に仕上げるため、澄んだ水面にやさしく唇
を濡らしてから、もう一度その臀部につるりと接吻してゆく。幾重
にも幾重にも。その肢体は逆さまになった樹木の蜃気楼として澄ん
だ水面にくっきりと映り込んでいる。妖しく揺らぐ銀色の月。やが
てその汗腺からうっすらと吹き上げる塩からい蒸気が股間の苔むし
た浅瀬の霧と交じり合って、よりいっそう深い緑の芳香を漂わせて
ゆくだろう。そのぼくらの秘密の周囲を取りまくように銀色に輝く
無数の川魚たちが勢いよく飛び跳ねまわることだろう。君という樹
木の体幹。川を下るように君という樹木を下ってゆく――

文学極道

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