絶えず揺れるコスモスが
公園の片隅で
老人たちを慰めている
その光景を見る度に
ガラス球の中の世界は小さくなる
すべてから遠ざかるように
無音の中に
ぎゅっと閉じ込められた
幾億の唇たちが
一斉に咲き始める
人が歩いて行く 大勢の人に混じって 小学生くらいの少女が いかにも迷子らしい泣きそうな顔で
辺りを見回している 彼女の家らしき場所には もうたくさんの コスモスが咲いていた
***
辞書によれば
浮かんでしまう病のことを
眠りというらしい
口から漏れる光は青く
かつての空を今も染め上げている
浮かんでいくわたしはミニチュアの光景をみつめている
上昇していく
胸の気泡がかぽかぽ騒ぐ
だというのにわたしは
行き先の太陽に居場所があるのかどうか
そんなことばかり気にしている
***
洗濯物が受け止めて
また離れた
緩やかな傾斜を落ちて
まるでどうしようもないものをみるように わたしが浮かんでいく 端々から端々まで 洗濯物が干されていた 呼吸は浅い 泣きたいけど認識されない 見失われた人々があちこちから歩いてくる ありもしない物語 の切れ端を捕まえるため 語られる言葉もまた 聞こえない
つぎはぎの向こうで
男が足を引きずりながら
口を動かしている
ところが音は途中から
光に変わっていくので
公園は明るい
残酷なほど
やがて諦めたように また浮かび上がっていく
知覚の外側を通って 少女には届かない 絶叫を放ちながら 男も 老人も わたしも
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選出作品
作品 - 20171209_932_10084p
- [佳] 音・その光景 - 森山イロイ (2017-12)
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音・その光景
森山イロイ