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作品 - 20171201_727_10066p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


優しさの領域

  霜田明

退屈は
ついえることでははかれない

世界中の遺伝子に告げたい
君たちに決められるものなんて
ほんのちっぽけなことだったよ

扉は澄んだ透明だから
敲いてもその向こう側の世界へ
知られることにはならない

清らかであり続けることで映す者が
ひとりの顔と呟けば済むような
分断された部分だけで実存している

触れることは
背中の方角を知ることだ

憂鬱は
服することでははかれない

みんな見ただろう
きれいな顔を
誰も触れることができなかっただろう

僕にはなにもわからなかった
触れることのできる手のひらは
過ごしていくことの眩しさに飢えていた

実在の君に触れることさえ
能力に瀕する水面のように
複雑な光の途を落とすのに

裸足の足跡を残すために
待てますか
生きているままで、

清らかでありたいと思うことが
君を無口にするのと似ている
だから僕らの恋はいつまでも
片想いにしか過ごされない

幸福だよ
僕らはとてもよく似ていた
つまり僕らが繰り返したかったのは
同じ言葉だと信じられたから

反応することは
優しさではなかった
存在することまでが
優しさの領域だった

若さに出口はない
という言葉の
意味が分かったよ

反応することは
寂しさだった
反復することが
寂しさの答えだった

ひとすじの煙がたちあがる
僕は寂しい言葉を聞いていた
それでも君だって綺麗なままだ
服することが夕空に触れていた

明日というほんの小さなことばさえ
僕は君に渡せない
「また一日が終わってしまう」
言葉はそこまでだったから

文学極道

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