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作品 - 20171013_581_9958p

  • [優]   z - あさぎ  (2017-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


 z

  あさぎ

味気がない、の代名詞だなんて
誰が決めたんだろう
なんて
ボンヤリ
思った



しながら

爪の間に犬歯を立てる

昼行燈のワイドショーの中に
眩しさは欠片も見当たらない

つまらないという思いすら
気化し
浄化し 
飽和する
夏だか秋だかわからない移ろいゆく平日

やりたいと思っている洗濯物は
見た目だけに惹かれた機能性無視のランドリーバスケットの中
もう2週間は放置していて
いつも通りに
外置きの洗濯機置き場と
中途半端に寂れて栄えた駅前商店街と
そこにある筈の所在不明なコインランドリーと
「もう少し前にはもっと暮らしやすい街に引っ越してる筈なのに」と
「大体、生まれた環境が悪かったんだ」に押し付けて
意識の端へ追いやってやり過ごす

右下1の前歯
親指の爪に沿わせて
こそぎ取る

砂利、と立てる厭な音

口の中

落ちた

動き出した時間が呆気なく追い越していく

嘘じゃなかった言葉だと信じていたかった言葉
留め処なく降り注いでいたもの
降り積もっていたもの
埋め尽くされていたと信じていたもの

硝子、なんて 本当はなかった
それも何処か知っていた
形を創っていたものは想念
そこにいたいという祈り

だって、それも、本当は、



1度も会った事のない
よく顔を知った政治家が
街宣車の上 がなり立てている

まだ昼過ぎ
洗濯
しなくちゃ

今日はまだ雨じゃない
まだ、間に合う

4.5リットルで一気に洗えない
外出着と汚れ物
分けて
洗う意味がわからない

実家に帰れば未だにいっしょくただし
そんなこと 教わりもしなかった

否定と罵声と無反応と「弱者にやさしく」という一般常識
365日 朝と晩
絶え間なく食べ続けたのはそれ

痛くはなかった
笑って過ごした
ただ いつも 休みたかった

何かに酔っていたかった
歩き続けていくために
虚空の夢で構わなかった
それがゆめだとわかっていたから

本当とか
現実とか
未来とか
真実
  、
   とか

いらなかった

いらないはずだった

脱水終了のアラームがチェーンロックをいつも忘れる玄関先から忍び込む

今日のドアロックは忘れていない
鍵を忘れても大丈夫な
意外

外干しのおひさまの匂いが好きと
笑ったあの子に
それ埃の匂いとの化学反応なんだってって
どこで拾ったかわからないような返事
しなかったのが良かったのかもわからない

止めたもの
動き出すもの

どちらも苦しいものならと

動かす方を選んだのだから

奥歯で
潰す






シャリ


   ……

文学極道

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