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作品 - 20170826_849_9860p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


私はその家族を見ている

  山人


きれいに折りたたまれた生活をそれぞれが晒している
涼やかな風を目元にたくわえ、定めた先に澄んだまなざしを向けている
生あたたかさにはしっかり蓋をして、静かに四隅を整えて桐の引き出しに仕舞い込む
できないことは静かに首を振り、できることを楚々と繰り返し、その時々を静かに噛み締める
遠くの山から湧き出た一本の清水で丹念に水みちをつくり、日ごと適量の汗をかき
ふくよかに笑い、小首を少し傾けて悩み、夢食い虫にならず
体内を巡る数億の血の道を日々めぐらせるための質素な食事を摂り
麓に放牧された幾千の羊を数え眠りにつく
よろこびを一つづつ紙に書き、ひとつひとつの物事を細やかに語り
それぞれに、指の湿度を感じ念じながら種をまく
小葉を揺らす言葉が、高層湿原のように数千の夜を超え確かな現実となる
生まれた現実を皆で祝い、祝福の言葉を押し並べる
その言葉を発し続けることで、言葉はさらに現実を成長させてゆく
小さな現実を皆々が自愛の目で崇め拍手する、それは素直な心を広げることであり、自らの解放である
開放された現実は心を持ち、恩返しにくる
小冊子の中に静かに活字として埋め込まれ、不思議な薬効を発揮し始める
それらの人々は飾ることのない、些細で凡庸な事柄ですらも優しく捉え、美しく議論する
そしてそこから、小さくも形を持つ富が誕生し続けるのである
まとわりつく陰湿な襞を伸ばし、口を尖らせたり、なだめたりしながら動物の家族のように舐めあう
やがて富は彼らを覆うように存在し、あらゆるものを守り始める
天空の怒りや突然の粛清、そういうものですら屈しない富を手に入れる
それは一心不乱に農民が作物を作るときに唱える豊年の祈り歌のようでもある

文学極道

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