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作品 - 20170717_161_9767p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


オレンジ色のスキー靴

  山人

「こうなって あういてう」 指差す君
「こうなって あういてうぅ」 何回も
「へんな ロボットぉ」 僕に訴える
こうなって・・・
25年前の君の声が
僕がうなずくまでずっと



小さなスキー場のパンフレット
チームの君は得意気にポーズを決めていた
三流の道具に身を包み
オレンジ色のスキー靴を履いて雪を切り刻み
旗門をくぐりぬけていた
君がまぶしく見えた

まわりは華やぎ
嫉妬と憎悪で雪は赤く燃えていた
曇ガラスを爪で引っ掻くような歯がゆさが
赤黒く粘った

君が負けた日
ガタピシと車を揺らし
幾度もタバコをもみ消した
君を踏み潰した風は
揚々と吹き去った
僕は自分に怒り
矛先はオレンジ色のスキー靴に向かっていた



あの時の
君は
もういない
パンフの君を指で触る
君は笑顔で撫でられている
でも何度撫でても同じ顔だ
君のカセットテープの中の声を聞く
君の声をいっぱい録ろうとしたのだけれど
テレビのアニメの声が大きくて
でも君の声が
必死にアピールする声が
指先と顔が僕を行ったり来たりして
君の瞳にはきらきらと確かにアニメが写り輝いていた


僕はただ
自分を差し出し
塊となって
汗や血を流しながら
君の温度を感じなければならなかった


今 君のどこかに
いくつかのおもいが
疼いているのだろうか

僕は君との交叉することにない未来に
ずっと歩くことを誓った

文学極道

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