「足りないわね。
「ええ、勿論、
「全く舐められたものよね、
あたしたちも。
紙袋を抱えて
いつものごとく並ぶ、
マンドリン、クローバー、その他諸々が
きゃあきゃあと折り重なりながら
足元を縦横無尽に駆け抜ける
、14時
「舌に合わないとまでは云わないけどさぁ。
「コームいつの間に変えたの、
「え、それくらい許してよ、
「暑いわね。
「みんな持ってるよね、そのラメ入りの雫、
「貴女も似合うんじゃない、
白くて消えそうな身体だから、ぴったり。
「―――ばか、
口癖は、当然
彼らの意識には、残りもしない
いよいよ母胎の中で
ゆるやかに発酵してゆくだけ、
(でも
人待ちに見えたらしいわよ、って、
うそぶかれる。
まだ新しい内腿の噛み痕に
つと身体を震わせ、記憶が明滅する、
(
「どうしても好みのミュールが見つからなくて。
「おかえりなさい、
「背の高い花は、今日までだったよね。
「水のような開放弦のファズ。
「この石鹸ロシア生まれだって。
「とんだ時間泥棒ね、
「メイクまで面倒見てあげるわ、
「今、虹を吊るしたところ。
それはあまねく、
「深海を漂流する、
「露の匂い。
「イメージは緑。
「シャンプーくらい置いてればいいのに、
「あとレンズ豆ね。
「土に還る植木鉢も欲しいな、
「見抜ける?あたしの思想、
「はぁい、ご給仕いたしまぁす。
「甘いのと、冷たいの、みっつずつ。
「人魚の鱗入りで。
「エスコートお願いね。
「膚の下へ、と、潜る光を見つけて。
「そうね、
貴女だから心配はしてないけど、
待ってるって伝わるよう、祈ってるから。
「またのお越しお待ちしてまぁす、
それはあまねく、
夢も現も、枷と糧。
「せっかく材料全部用意したのにね。
「頼む相手盛大に間違えたのよ、
見破れなかったあたしたちも悪い、
「ねぇ、そんなに感傷っぽかったかしら、
「あの厨房じゃそうなるでしょ。どうしたって、
「あーあ。結局ぜーんぶ、バクテリアの世界。
「それにさ、空調ゆるくなかった?
「せめて今度の雨は砂糖少なめがいいなぁ。
「予報外れてばかりだものね、
少しだけ、脱落したことを
気にも留めずに
荷は詰め替えられてゆく
故に、
故にそれはまた、
何処かで人知れず翻っている、
貴女の唄に帰結してゆくのでしょう。
こうしている間にも
ラクレットのごとく削られて
絶えず意図せぬ地平へ堕ちまいと、
抗っているのは、
もうどうしようもなくて、
ただ、
「さよなら、ね。
「あたしたちこんなだから、
「飛沫のせいで脚見えないね、
「別に消える気はないけど。
「でも、本当に、あと少しでいいの。
「魔法と疑わずに済むのなら。
「だから、薬屋さんによろしくね、
「きっとお互い、いなくて困ると思うわ、
これからずっと、
選出作品
作品 - 20170701_310_9717p
- [優] Grimm the Grocer (back to back) - アルフ・O (2017-07)
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