座っているだけの
カフェテラスの窓辺
ぼくはいつだって
平和でいたかった
窓の桟に
ハエトリグモが一匹
アルミ製の桟は
彼の橋ではなく
登ろうとしては
滑り落ちる
ひっくり返って
宙を掻くようにもがいている
(ただ満足でないのなら
どうやっても満足はありえない)
僕の悔いや妬みがああやって
着飾って歩く人々の姿をとるならば
きっともう それは
僕の内部ではないんだ
(短く明けるコーヒーの黒)
着飾ることを羨んでいた
窓の桟に
ハエトリグモが一匹
(登ろうとしては
滑り落ちる
ひっくり返って
宙を掻くようにもがいている)
(僕の無能を限ることで
温もる冬のカフェテラス)
見つめることの無邪気さが
ハエトリグモを重大にする
(彼らのように有能でありたかった)
(ぼくらはみんな虚しいと思っていたのに)
わずかな賞賛さえ恋しかった
あなたの愛を勝ち取りたかった
このクモに対する僕のように
誰も僕を励ますことはできない
(君は世界が怖くはないか
僕らはいつでも人が怖い)
このクモの生命は
僕の生命と同じ
僕らはきっと同じところにいて
きっと同じことを知っている
(それでも
僕は いけないんだ)
僕は必死に
怠惰を暮らす
差し込む夕陽の眩しさに
明日を信じてしまいそうになる
僕らの吹かれる共同を
(どうして生命に置いたのか)
最新情報
選出作品
作品 - 20170602_546_9656p
- [優] 窓辺 - 霜田明 (2017-06)
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窓辺
霜田明