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作品 - 20170527_423_9644p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


伝令者

  鷹枕可

拍車が花粉を吹く錆鐘の第一季節にて
微動すらしらなき熱気球を剥くと
檸檬樹に拡がる
葉巻より滑り落ちた
シャープペンシルの
薬莢が緩み始めている

敷きつめられた
薇蕨縺れる自動ドアに佇む抽象の街角は
哨戒機の劈く兵卒たちに
告別されたばらを
白い喪章をふるわせ已まない

瑞瑞しく葬列は
鞦韆の有る午刻に送電線の間を
飛翔する
月時計世紀への靴跡を遺して

ウェルバー・ライト兄弟からなる鳥達を仰ぎながら
昼の墜落した街路に
托鉢修道僧の眩暈を
沸騰をする
麺麭籠の静物に何時でも受けられた
口唇の何と喧しいことか

死は死の侭で擱かれているか
終始に亙り見世物に拠って吹聴された喚声
それは
古代劇場の起源を
程勿くして発展した
廃鉱の門扉を潜る影勿き影の市営納骨所を焼く様に
少女と火事をその精神像に同じく置く

咽喉に壊れた扁桃果より
飢饉の町への街道は絶たれ
乾燥花は舷窓と艦橋を繋ぎ亙りながら
嵐の散弾を撒く
孤絶をただ一つの峻厳と抱えながら


.


希臘の精神に
砒霜の花が結実し
永続起源の棘が死の符牒を世界と凝るまで
幾許かの韜晦が臍として穢され
田園を捻れて屹える蛇の樹は
数秘術の崗に
岩窟に青聖母の外套を
紛糾する十二の独身者達を
存在をしなかった単純機械の様に
聖像破壊の機運に破棄してしまうだろう

石像の少年達が運命を誰ともなしに鳴響する冬薔薇の水甕へ嘱目する様に
普遍死の骰子は静脈坑に繋がれた市街地を鹹い塩の思想家達の捕縛をものともせず喚き已まず
周縁より罅割れた花崗石の紋様は翻って遭遇者達の躊躇う靴跡の様に舞踏し、
静かな蛇蠍の草花はうつむきがちな水萵苣の拘縮を柔かく緘口令の町に通牒を報い続けた

戦禍を招く国家がひとしずくの歌劇或は花劇を忌々しく掲揚を期す
残酷劇俳優達はひとりのこらず精神病院に週間紙のゴチック文字を糊塗することを止めて終った
而して本当は知っているのか、全ての教会建築は臓腑のため乱鐘を打つのだという事を
熱風に撓む空襲の窓から燦燦と焼夷弾が撒かれるそれは良き糧の収穫などでは無いのだ
決して結実を期すことの無い堕胎された恩寵のかのひとは、誕生から別の誕生へ亙っていたあのミルクの、
偶像への瞋りのように孵る木綿の真っ赤な花々を踏み掻き分けながら、それでも何者かになれると思っていたのだろうか
既に余命を数えるには歳月は速く遅く、滲んだ丸時計の、落ちてゆく少年の、

人動貨車の周縁を、

文学極道

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